「特定技能外国人を採用したいが、登録支援機関への委託費用が負担になる」「自社だけで支援できないか」—こうした疑問を持つ人事担当者の方は少なくありません。特定技能制度では、受入れ機関(特定技能所属機関)が支援の全部を登録支援機関に委託することもできますが、一定の要件を満たせば自社で支援を行う「自社支援」も認められています。本記事では、登録支援機関に委託しない場合に求められる支援体制基準、必ず行う義務的支援と任意で行う任意的支援の違い、さらに外食・建設・介護など分野別の追加要件までを、2026年6月時点の一次情報をもとに整理します。自社支援を検討する際の判断材料としてお役立てください。
【筆者プロフィール】
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。 また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
特定技能の支援とは?「自社支援」と「委託」の違い
特定技能1号で外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、その外国人が安定的かつ円滑に活動できるよう、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援を行う義務があります。これは出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)第2条の5第6項および第19条の22に基づくもので、受入れ機関はあらかじめ「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、その計画に沿って支援を実施しなければなりません。特定技能は数ある就労系の在留資格のひとつですが、他の資格と比べて受入れ機関側に支援義務が課される点が大きな特徴です。
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この支援は、受入れ機関が自ら行う「自社支援」のほか、登録支援機関に委託して実施することもできます(入管法第19条の22第2項)。ここで重要なのが、支援計画の全部を登録支援機関に委託した場合は、受入れ機関が満たすべき支援体制の基準(入管法第2条の5第3項のうち支援計画の適正な実施の確保に係る部分)に適合したものとみなされる、という点です(同条第5項)。
逆にいえば、自社で全部または一部の支援を行う場合には、受入れ機関自身がこの支援体制基準を満たす必要があります。委託費用を抑えられる一方で、社内に支援を担える体制があることが前提となるわけです。
出入国管理及び難民認定法
第二条の五6 別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関は、法務省令で定めるところにより、当該機関が当該外国人に対して行う、同号に掲げる活動を行おうとする外国人が当該活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援(次項及び第四章第一節第二款において「一号特定技能外国人支援」という。)の実施に関する計画(第八項、第七条第一項第二号及び同款において「一号特定技能外国人支援計画」という。)を作成しなければならない。
第十九条の二十二 特定技能所属機関は、適合一号特定技能外国人支援計画に基づき、一号特定技能外国人支援を行わなければならない。
2 特定技能所属機関は、契約により他の者に一号特定技能外国人支援の全部又は一部の実施を委託することができる。
登録支援機関に委託しない場合に必要な「支援体制基準」
自社支援を選ぶ場合に問われるのが、支援体制基準です。根拠は、特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成31年法務省令第5号。以下、特定技能基準省令)第2条第2項各号にあります。主な要件は次のとおりです(2026年6月時点)。
- 支援責任者・支援担当者の選任:受入れ機関の役員または職員の中から支援責任者を選任し、外国人に活動させる事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任します(兼任可)。
- 支援実績または相談業務経験:(1)過去2年間に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ実績がある、(2)2年以内に業として外国人の各種相談業務に従事した経験がある、(3)これらと同程度に支援を適正に実施できると認められる者を選任している、のいずれか。
- 中立性・欠格事由への非該当:支援責任者・支援担当者が外国人を監督する立場になく、中立的に支援を行える者で、かつ欠格事由に該当しないこと(同省令第2条第2項第4号)。
- 過去の不履行がないこと:契約日前5年以内およびそれ以降に、支援計画に基づく支援を怠っていないこと(同項第5号)。
- 定期面談を実施できる体制:支援責任者または支援担当者が、外国人およびその監督者と定期的(3か月に1回以上)に面談できる体制があること。
- 理解できる言語での実施体制:事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談苦情対応・定期面談は、外国人が十分に理解できる言語で実施できる体制が必要(同省令第4条第3号)。
なお、過去に外国人の受入れ実績がない企業の場合、上記(1)〜(3)の充足が論点になりやすく、実務上は自社支援のハードルが高くなる場合があります。該当性に不安がある場合は、管轄の地方出入国在留管理局に事前確認することをお勧めします。
特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令
第二条2 法第二条の五第三項の法務省令で定める基準のうち適合一号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るものは、次のとおりとする。
一 次のいずれかに該当すること。
イ 過去二年間に法別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことができる在留資格に限る。ロにおいて同じ。)をもって在留する中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、
かつ、役員又は職員の中から、適合一号特定技能外国人支援計画の実施に関する責任者(以下「支援責任者」という。)及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに一名以上の適合一号特定技能外国人支援計画に基づく支援を担当する者(以下「支援担当者」という。)を選任していること(ただし、支援責任者は支援担当者を兼ねることができる。以下同じ。)。
ロ 役員又は職員であって過去二年間に法別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格をもって在留する中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに一名以上の支援担当者を選任していること。
ハ イ又はロの基準に適合する者のほか、これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに一名以上の支援担当者を選任していること。
二 特定技能雇用契約の当事者である外国人に係る一号特定技能外国人支援計画に基づく職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を当該外国人が十分に理解することができる言語によって行うことができる体制を有していること。
三 一号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、当該一号特定技能外国人支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から一年以上備えて置くこととしていること。
四 支援責任者及び支援担当者が、外国人を監督する立場にない者その他の一号特定技能外国人支援計画の中立な実施を行うことができる立場の者であり、かつ、第一項第四号イからルまでのいずれにも該当しない者であること。
五 特定技能雇用契約の締結の日前五年以内又はその締結の日以後に、法第十九条の二十二第一項の規定に反して適合一号特定技能外国人支援計画に基づいた一号特定技能外国人支援を怠ったことがないこと。
六 支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。
七 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。
出入国在留管理庁の特定技能制度ページ
義務的支援と任意的支援の違い(10項目早見表)
支援には、必ず全てを実施しなければならない「義務的支援」と、行うことが望ましい「任意的支援」があります。両者の違いは次のとおりです。
- 義務的支援:全てを実施し、支援計画に記載しなければなりません。一部でも怠ると、支援計画を適正に実施していないと判断されます。
- 任意的支援:実施は任意です。ただし、支援計画に記載した場合には実施義務が生じます。
- 支援に要する費用を外国人本人に負担させてはならないとされるのは、義務的支援に係る費用に限られます。
義務的支援は次の10項目で、根拠は特定技能基準省令第3条第1項第1号イ〜ヌです。
| № | 支援項目(根拠) | 義務的支援の概要 | 任意的支援の例 |
| 1 | 事前ガイダンス(イ) | 在留申請前に、対面・テレビ電話で本人確認のうえ、労働条件・活動内容・入国手続・保証金の不徴収・支援費用の不負担などを理解できる言語で説明 | 入国時の気候や服装、持参すべき物、当面必要な金額などの情報提供 |
| 2 | 出入国時の送迎(ロ) | 入国時は港・空港と事業所(住居)の間を送迎、出国時は保安検査場の前まで同行 | 国内移動の送迎・費用負担(既に在留する者の場合など) |
| 3 | 住居確保・生活契約支援(ハ) | 連帯保証人・社宅提供等による住居確保、銀行口座・携帯・ライフライン契約の補助 | 契約途中の変更・解約手続の補助 |
| 4 | 生活オリエンテーション(ニ) | 入国後遅滞なく、生活一般・行政手続・医療・防災防犯・法的保護などを理解できる言語で説明 | 別冊上、特段の定めなし |
| 5 | 公的手続等への同行(ホ) | 届出・社会保障・税などの手続に必要に応じ同行・書類作成補助 | 別冊上、特段の定めなし |
| 6 | 日本語学習の機会の提供(ヘ) | 日本語教室の案内・教材情報提供・講習機会の提供のいずれか | 受験支援、資格取得者への優遇、学習費用の負担 |
| 7 | 相談・苦情への対応(ト) | 遅滞なく対応・助言、必要に応じ関係機関の案内・同行。理解できる言語で実施 | 相談窓口情報の一覧手渡し、専用電話・メールの設置 |
| 8 | 日本人との交流促進(チ) | 地域交流の場・行事の案内、参加手続の補助 | 行事参加時の有給付与・勤務時間配慮 |
| 9 | 転職支援(リ) | 受入側都合の解除時に、転職先紹介・推薦状作成等+有給付与+行政手続情報の提供 | 別冊上、特段の定めなし |
| 10 | 定期面談・行政機関への通報(ヌ) | 外国人と監督者それぞれと3か月に1回以上面談、法令違反を知れば関係機関へ通報 | 関係行政機関の窓口情報の一覧手渡し |
事前ガイダンスや定期面談など一部の項目には、確認書・面談報告書(参考様式第5-4号〜第5-9号等)の作成・保存が求められる点にも留意が必要です。特定技能制度の全体像や受入企業の支援義務については、別記事もあわせてご確認ください。
特定技能制度と受入企業の支援義務の全体像
分野別に異なる追加要件(外食・建設・ビルクリーニング・介護・宿泊・製造業)
特定技能には、分野ごとの「上乗せ基準」があります。これは特定技能基準省令第2条第1項第13号・第2条第2項第7号に基づき、分野を所管する大臣が告示で定めるもので、多くの分野で協議会への加入(原則として在留諸申請の前)が必要です。代表的な分野の追加要件を概観します(2026年6月時点)。
特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令
第二条十三 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。
第二条2 法第二条の五第三項の法務省令で定める基準のうち適合一号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るものは、次のとおりとする。
七 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。
- 外食業(農林水産省):食品産業特定技能協議会への加入が必要。受入れ見込数の上限に達したことから、2026年4月13日以降、在留資格認定証明書の交付・変更許可の一時停止措置が講じられています。最新の交付状況を必ず確認してください。
- 建設業(国土交通省):建設業法第3条の許可、建設キャリアアップシステム(CCUS)登録、JAC(建設技能人材機構)への加入に加え、在留申請の前に国土交通大臣による「建設特定技能受入計画」の認定が必要。報酬は月給制とし、FITS(適正就労監理機関)の巡回指導にも対応します。
- ビルクリーニング(厚生労働省):建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)第12条の2に基づく「建築物清掃業」等の登録が前提となります。
- 介護(厚生労働省):事業所単位の人数枠(特定技能外国人の総数が日本人等の常勤介護職員の総数を超えない)があります。2025年4月の改正で、一定の要件下で訪問系サービスへの従事も可能になりました。
- 宿泊(観光庁):旅館業法に基づく「旅館・ホテル営業」の許可が必要で、風営法上の接待を伴う業務には従事させられません。
- 工業製品製造業(経済産業省):対象の産業分類に該当する事業所であることが前提。2026年の改正で受入れ事業所のJAIM(工業製品製造技能人材機構)加入や業務区分の追加(2026年6月1日施行)など、運用の変更が進んでいます。
協議会への加入手続が在留申請に間に合わないケースもあり、その場合に「特定活動(特定技能1号移行準備)」を活用できることがあります。分野ごとに様式や手続が異なり改正も頻繁なため、各分野の運用要領別冊で最新の取扱いをご確認ください。
協議会加入が間に合わないときの特定活動(移行準備)
自社支援のメリット・注意点と必要な届出
自社支援のメリットは、登録支援機関への委託費用がかからないこと、社内に支援ノウハウが蓄積されること、そして日々接する自社が直接支援することで外国人との信頼関係を築きやすいことが挙げられます。
一方で、支援体制を継続的に維持する負担は小さくありません。受入れ後は、受入れ・活動・支援の実施状況に関する定期届出(年に一度)や、契約・支援計画の変更等に係る随時届出が必要になります(入管法第19条の18)。また、支援の実施状況に係る記録や面談報告書などの作成・保存も求められます。
なお、支援は「全部委託」か「全部自社」の二択ではありません。一部のみを登録支援機関に委託することも可能で、その場合は支援計画に委託の範囲を明示する必要があります(特定技能基準省令第4条第4号)。たとえば送迎や住居確保など負担の大きい項目だけを委託し、相談対応や面談は自社で行う、といった設計も考えられます。採用全体の進め方とあわせて、自社の体制に応じた無理のない支援の組み立てを検討するとよいでしょう。
特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令
第四条四 一号特定技能外国人支援の一部の実施を契約により他の者に委託する場合にあっては、その委託の範囲が明示されていること。
外国人採用の3つの方法
受入れ後の届出に関する公式案内
よくある質問(FAQ)
- Q登録支援機関に委託せず、自社だけで特定技能外国人を支援できますか?
- A
できます。支援体制基準(特定技能基準省令第2条第2項)を満たせば自社支援は可能です。ただし、支援計画の全部を登録支援機関に委託した場合はこの基準を満たしたものとみなされるのに対し、自社支援の場合は受入れ機関自身が体制基準を満たしていることを示す必要があります。
- Q外国人の受入れ実績がない会社でも自社支援はできますか?
- A
過去2年間の受入れ実績がなくても、2年以内に業として外国人の相談業務に従事した経験がある場合や、これらと「同程度に支援を適正に実施できると認められる」場合には可能です。ただし該当性は個別の審査によるため、管轄の地方出入国在留管理局に事前確認することが安全と解されます。
- Q義務的支援と任意的支援は何が違いますか?
- A
義務的支援は10項目すべてを必ず実施し、支援計画に記載しなければならないものです。任意的支援は実施が任意ですが、支援計画に記載した場合は実施義務が生じます。また、外国人本人に費用を負担させてはならないのは、義務的支援に係る費用に限られます。
- Q支援の一部だけを登録支援機関に委託することはできますか?
- A
できます。一部委託の場合は、支援計画にその委託の範囲を明示する必要があります(特定技能基準省令第4条第4号)。送迎や住居確保など負担の大きい項目だけを委託し、相談対応や定期面談は自社で行う、といった設計も可能です。
- Q分野別の協議会には、いつ加入すればよいですか?
- A
多くの分野で、令和6年(2024年)6月以降、原則として在留諸申請の前に加入を完了している必要があります。加入審査に一定の期間を要する分野もあるため、採用スケジュールには余裕をもたせることが望まれます。分野ごとに取扱いが異なるため、最新の分野別運用要領をご確認ください。
まとめ
特定技能の自社支援は、登録支援機関に委託しない分の費用を抑えられる一方で、支援体制基準を満たし、義務的支援を確実に実施する体制が前提となります。義務的支援は10項目すべてが必須で、任意的支援も計画に記載すれば実施義務が生じます。さらに外食・建設・介護など分野ごとの追加要件や協議会加入、各種届出も欠かせません。制度は省令改正や運用変更が頻繁なため、最新情報の確認が重要です。具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。
