日本人と離婚した外国人女性が「定住者」へ|告示外定住(離婚定住)の在留資格変更が許可された事例
日本人の配偶者と離婚すると、「日本人の配偶者等」の在留資格のままでは日本に住み続けることができなくなります。 このとき、婚姻期間や生活状況によっては、法務大臣告示に定めのない「告示外定住」として、 「定住者」への在留資格変更が認められる場合があります(いわゆる離婚定住)。 本記事では、日本人との婚姻・離婚歴が2回あり、しかも前の離婚成立より前に次の配偶者との同居が始まっていたという 説明の難しい事情を抱えた方が、事実をありのままに説明する理由書によって定住者への変更許可を受けた事例をご紹介します。
ケース概要
- 国籍・性別
- 台湾・女性
- 変更前の在留資格
- 日本人の配偶者等
- 変更後の在留資格
- 定住者(告示外・いわゆる離婚定住)/在留期間1年
- 在留歴
- 10代で留学のため来日し、約13年にわたり継続して適法に在留
- 直近の婚姻期間
- 約5年4か月(離婚直前の一時期を除き同居)
- 子ども
- なし(2回の婚姻とも、日本人配偶者との間に子はいない)
- 離婚の原因
- 相手方(日本人配偶者)の度重なる不貞行為
- 生計
- 正社員としての採用内定(無期雇用・社会保険加入)+十分な預金
- 日本語能力
- 日本語能力試験N1
- 難易度
- 高(婚姻・離婚歴2回、前婚の離婚成立前の同居開始、年金の一部未納、先行した技人国申請の取下げ)
- 担当
- 行政書士 加治屋事務所
事案の背景——日本人配偶者と離婚し、在留期限が迫る中でのご相談
申請人は、10代で留学のため来日し、専門学校・大学で学んだ後、日本人男性との婚姻を機に在留資格を 「日本人の配偶者等」に変更した台湾国籍の女性です。以来、約13年にわたって継続して日本で暮らし、 仕事や交友関係など生活の基盤はすべて日本にありました。
申請人には日本人との婚姻歴が2回あります。最初の婚姻は約3年で破綻し協議離婚、その後に再婚した日本人配偶者(以下「前夫」)とは 約5年4か月にわたって同居し、家計を一にする夫婦生活を送っていました。 しかし婚姻の終盤に前夫の度重なる不貞行為が判明し、関係は修復不能となって、2025年12月に協議離婚に至りました。 なお、2回の婚姻のいずれにおいても、日本人配偶者との間に子どもはいません。
日本人の実子を日本で養育している場合には、その事情が定住者を認める大きな理由となり得ます。 本件はそうした事情がなく、婚姻生活の実態と、申請人自身の日本での生活基盤だけで定住者への変更の必要性を説明しなければならない事案でした。
離婚により、申請人は「日本人の配偶者」という身分を失いました。「日本人の配偶者等」の在留期限は2026年8月に迫っており、 日本での生活を続けるには、別の在留資格へ変更する必要がありました。
「告示外定住」とは——離婚定住は告示に定めのない定住者
「定住者」は、法務大臣が個々の外国人について特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める在留資格です(出入国管理及び難民認定法 別表第二)。 このうち、日系人や定住者の配偶者など、あらかじめ法務大臣の告示(いわゆる定住者告示)に類型が定められているものを「告示定住」、 告示に定めはないものの個別の事情から定住者として在留が認められるものを「告示外定住」と呼びます。
告示外定住には告示のような明文の要件がないため、申請人の側で「なぜ定住者として在留を認めるべきなのか」を 具体的な事実と資料で説明しなければなりません。本件では、実務上離婚定住の判断で重視される次の4つの観点に沿って、申請理由書を構成しました。
本件の申請理由書で整理した4つの観点
- ① 日本人配偶者との正常な婚姻関係・家庭生活がおおむね3年以上継続していたこと
- ② 独立して生計を営むに足りる資産または技能があること
- ③ 日常生活に不自由しない程度の日本語能力があること
- ④ 納税・年金などの公的義務を履行していること(またはその見込みがあること)
4つの観点をどう立証したか
① 正常な婚姻関係の継続——約5年4か月の同居と、破綻原因が相手方にあること
前夫との婚姻期間は約5年4か月で、「おおむね3年以上」という目安を大きく上回っていました。 ただし重要なのは期間の長さだけではなく、その間実体のある夫婦生活が営まれていたことです。 本件では、同居中の写真やLINEのやり取りなど夫婦としての実態を示す記録を提出しました。
あわせて、婚姻の破綻が前夫の不貞行為によるもので、申請人に責めるべき事情がないことも説明しました。 離婚当時に申請人が友人へ相談していたLINEの記録は、破綻に至る経緯を同時期の客観資料として裏付けるものになりました。
② 独立生計——正社員内定と預金
申請人は、以前アルバイトをしていた会社から期間の定めのない正社員としての採用内定を得ていました。 労働条件通知書で、月給が20万円台後半であること、厚生年金・健康保険・雇用保険に加入することを示し、 手取り額で毎月の生活費を十分に賄えることを説明しました。さらに十分な額の預金があることを通帳の写しで示し、 公共の負担となるおそれがないことを裏付けました。
③ 日本語能力——N1と約13年の生活実績
申請人は日本語能力試験の最上級であるN1に合格しており、約13年の日本での学業・就労を通じて、 日常生活だけでなく仕事でも日本語に支障がないことを説明しました。
④ 公的義務——年金の一部未納を「隠さず、手続きの履践で説明」
本件で注意が必要だったのが年金です。申請人には、国民年金の第1号被保険者期間のうち一部の期間(1年余り)に未納がありました。 一方で、それ以外の期間は自ら申請免除(全額・半額)の承認を受けていたり、配偶者の扶養に入る第3号被保険者として適正に扱われていたりしており、 制度上の手続きを放置していたわけではありませんでした。住民税についても、課税された年度に未納はありませんでした。
理由書では未納の事実を正面から認めたうえで、日本年金機構の被保険者記録照会の資料一式で納付・免除の状況を示し、 今後は就職により厚生年金保険料が給与から控除されるため、公的義務を継続的に履行できる見込みが高いことを説明しました。
最大の論点——婚姻歴2回と「前婚の離婚成立前の同居開始」をどう説明するか
本件で最も慎重な説明を要したのは、申請人の婚姻歴でした。申請人は最初の配偶者と別居した後、 その離婚が成立する前に、前夫を含む知人らとの共同生活を始めていました。 戸籍や住民票の記録を見れば、前婚の離婚成立日よりも前に、前夫と同じ住所に移っていることが分かります。
婚姻・離婚の経緯は、戸籍謄本や住民票の除票などの公的書類から読み取れます。 不利に見える事実を理由書で触れずにおくと、審査の過程で「説明されていない矛盾」として扱われ、 かえって婚姻の真実性や申請全体の信用性に疑問を持たれるおそれがあります。
そこで本件では、理由書の冒頭で「これらの事実関係を隠すことなく、ありのままにご説明する」と明記したうえで、次のように整理しました。
- 最初の婚姻は、相手方の就労が安定せず家計の負担が一方的に申請人に偏ったことなどから、別居によって同居開始の時点ですでに実質的に破綻していたこと
- 前夫とは当初、仕事上の知人にすぎず、共同生活も仕事仲間を含む3人での同居から始まったこと。前婚の夫婦生活と前夫との生活が並行・重複していた事実はないこと(旧住所の住民票の除票で裏付け)
- 前夫との婚姻は、前婚の離婚が成立した後に届け出たものであること
- 離婚定住で評価されるべきは直近の婚姻(前夫との婚姻)の正常性・継続性であり、前婚の事情とは区別して判断されるべきこと
事実を時系列で率直に示し、そのひとつひとつを客観資料で裏付けることで、 「不利な事実がある申請」から「事情が十分に説明された申請」へと位置づけを変えることを目指しました。
在留資格取消制度との関係と、先行した技人国申請の取下げ
「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ方が、正当な理由なく配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないと、 在留資格の取消しの対象になり得ます(入管法22条の4第1項7号)。もっとも、その場合でも入管は在留資格の変更申請の機会を与えるよう配慮しなければならないとされています(同法22条の5)。 本件では離婚から申請まで6か月を超えていたため、理由書でこの点にも触れ、離婚後に一貫して適法な在留を維持するための手続きを進めてきた経緯を説明しました。
実は申請人は、離婚後に別の会社から正社員の内定を得て、前任の専門家を通じて「技術・人文知識・国際業務」への変更申請をすでに行っていました。 しかし、在留期限までに審査結果が出る見込みが立たず、内定先から「在留期限で一区切りをつけたい」との意向が示されたため、 2026年7月中旬、やむなくその申請を取り下げ、退職することになりました。その後、以前のアルバイト先から改めて正社員の内定を得ています。
当事務所にご相談をいただいたのは、在留期限まで1か月を切った2026年7月下旬です。面談とヒアリングでは、 新しい内定先で改めて技人国の変更申請を行うか、告示外定住(離婚定住)として定住者への変更申請を行うかを検討し、 最終的に定住者への変更申請を選択しました。
理由書では、この経緯を「在留の空白や違法な状態をつくらず、自立に向けて行動してきた証拠」として位置づけ、 前任者が作成した理由書も添付して説明の一貫性を確保しました。
主に準備・提出した資料
定住者(告示外・離婚定住)への変更申請で提出した主な資料
- 在留資格変更許可申請書・写真・パスポート・在留カード
- 申請理由書(当事務所作成)
- 戸籍全部事項証明書・婚姻受理証明書・離婚受理証明書(婚姻・離婚の経緯)
- 旧住所の住民票の除票・現在の住民票(同居・転居の経緯)
- 夫婦としての実態を示す写真・LINEの記録
- 離婚当時に友人へ相談していたLINEの記録(破綻原因の裏付け)
- 労働条件通知書・内定先の会社案内(独立生計)
- 預金通帳の写し(資産)
- 日本語能力試験の認定書(日本語能力)
- 被保険者記録照会回答票などの年金記録一式(公的義務)
- 課税(非課税)証明書・納税証明書(公的義務)
- 身元保証書
- 前任者作成の理由書(先行した技人国申請の経緯)
時系列
よくある質問
まとめ——告示外定住(離婚定住)の変更許可を得るためのポイント
- 日本人と離婚した外国人が「定住者」となる離婚定住は、定住者告示に定めのない告示外定住。在留中の在留資格変更許可申請で審査される
- 理由書では、①おおむね3年以上の正常な婚姻関係、②独立生計、③日本語能力、④公的義務の履行、の各観点を具体的な事実と資料で示す
- 婚姻の期間だけでなく、実体のある夫婦生活と、破綻の原因が申請人側にないことを客観資料で裏付ける
- 婚姻歴の複雑さや同居開始時期など、不利に見える事実ほど先に自分から説明する。公的書類から読み取れる事実を伏せると、申請全体の信用性を損なうおそれがある
- 年金・税の未納は隠さず開示し、免除手続きの履践や今後の納付見込みを示す
- 配偶者としての活動を6か月以上行わないと取消しの対象になり得る。離婚後14日以内の配偶者に関する届出も忘れずに
- 審査期間が就職先の事情に影響することもある。離婚が決まった段階で早めに方針を決めて動く
離婚後の在留資格の手続きは、婚姻期間、生計、日本語能力、公的義務の状況、お子さんの有無などによって進め方が大きく異なります。 具体的な手続きについては、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。
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