技人国の更新で在留期間3年から5年へ|食品輸出会社で通訳・翻訳に従事する中国籍社員の許可事例
在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の更新では、「今の仕事が引き続き在留資格に当てはまるか」に加えて、 本人の在留状況や会社の安定性も確認されます。また、更新のたびに何年の在留期間が許可されるかも、本人と会社にとって大きな関心事です。 本記事では、日本の高級食材を海外へ輸出する会社で、海外取引先とのやり取りを担う通訳・翻訳に従事する中国籍の社員について、 在留期間3年からの更新申請を行い、申請から約1か月で在留期間5年の更新許可を受けた事例をご紹介します。
ケース概要
- 国籍・性別
- 中国・男性(30代)
- 在留資格
- 技術・人文知識・国際業務/前回許可の在留期間は3年、今回は5年を希望
- 学歴・語学
- 日本の大学院(ビジネス系の修士課程)を修了。母語は中国語(広東語)、日本語能力試験N1合格
- 職務内容
- 水産物を中心とする海外取引に係る通訳・翻訳(海外取引先からの受注対応・連絡調整・商品情報の作成)
- 所属機関
- 日本の高級食材を海外の飲食店・ホテル向けに輸出卸する会社(創業20年近く、従業員十数名、年商十億円超)
- カテゴリー
- カテゴリー3(前年分の法定調書合計表を提出している中小企業)
- 入社の経緯
- 大学院在学中から同社でアルバイトとして勤務し、修了後に正社員として入社
- 難易度
- 標準(在留状況に問題なし。通訳・翻訳の業務量と、5年の在留期間を希望する理由の説明がポイント)
- 担当
- 行政書士 加治屋事務所
事案の背景——海外取引を担う通訳・翻訳担当者の更新
申請人は、日本の大学院でビジネス系の修士課程を修了した中国籍の男性です。 大学院在学中からアルバイトとして勤務していた会社に、修了後、正社員として入社しました。 在留資格は「技術・人文知識・国際業務」で、前回の許可で認められた在留期間は3年でした。
勤務先は、まぐろなどの水産物をはじめとする日本の高級食材を、海外の飲食店・ホテル向けに輸出卸している会社です。 中国語圏、とくに広東語圏の取引先への空輸卸が事業の柱で、海外取引が売上の中心を占めています。 申請人は広東語を母語とし、海外取引先からの注文や問い合わせを日本語に翻訳して受注処理につなげる役割を担ってきました。
今回は在留期限の約1か月半前に更新申請を行い、会社としても長く働いてもらいたいという意向から、在留期間5年を希望しました。
「国際業務」の通訳・翻訳は、業務量と語学力を具体的に示す
通訳・翻訳は、技人国のうち「国際業務」に当たる代表的な業務です。 一方で、社内で通訳・翻訳がどの程度発生しているのかが見えないと、「実際には別の作業が中心ではないか」と疑問を持たれやすい業務でもあります。 そこで理由書では、業務の内容を3つに整理したうえで、業務量を数字で示すことに重点を置きました。
理由書で示した業務内容
- 海外取引先法人への多言語対応、商品情報の作成・発信
- 海外取引先法人からの問い合わせ・注文対応
- 海外取引先法人の営業担当者との連絡・調整
- 申請人が担当する海外取引先は約70社あり、毎日40〜50社から注文が入る
- 1社から複数の注文があるため、扱う商品は1日160〜200品目程度にのぼる
- 注文はすべて英語・広東語・中国語で届き、申請人がその内容を日本語に翻訳して受注処理を行っている
あわせて、母語である中国語(広東語)に加え日本語能力試験N1に合格していること、日本の大学院を修了していることを示し、 日本語と中国語の双方向で通訳・翻訳を行う語学力があることを説明しました。 これらの業務が単純作業や反復訓練で従事できるものではなく、会社の事業に欠かせない業務として恒常的に相当量が存在することを明確にしています。
大学・大学院の卒業者が通訳・翻訳に従事する場合は実務経験不要
技人国の「国際業務」については、上陸許可基準(基準省令)で、翻訳・通訳・語学の指導・広報・宣伝・海外取引業務などに従事すること、 原則として関連する業務について3年以上の実務経験があること、日本人と同等額以上の報酬を受けることが定められています。 ただし、大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導に従事する場合は、実務経験は不要とされています。
本件の申請人は日本の大学院の修士課程を修了しており、従事する業務は通訳・翻訳であるため、実務経験の要件は問題になりません。 理由書では、基準の3つの要素(業務・実務経験・報酬)をそれぞれ取り上げ、報酬については課税証明書で年収を示して、 社内で日本人が同種の業務に従事する場合と同等額以上であることを説明しました。
実務経験が不要になるのは、大学卒業者が翻訳・通訳・語学の指導に従事する場合です。 広報・宣伝や海外取引業務などが主な業務の場合は、原則どおり3年以上の実務経験が必要になります。 職務内容が複数にまたがるときは、どの業務が中心なのかを整理して説明することが大切です。
カテゴリー3の会社でも、会社の安定性を資料で示す
技人国の申請では、所属機関(会社)が規模などに応じてカテゴリー1〜4に区分され、カテゴリーによって提出書類が異なります。 本件の会社は、前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表で源泉徴収税額が1,000万円未満のため、 カテゴリー3に当たります。
カテゴリー3の会社は、上場企業などに比べて会社の情報が審査側に伝わりにくいため、理由書で会社の概要を丁寧に説明しました。 具体的には、創業からの事業の歩み、主要な取引先地域、従業員数、直近事業年度の売上高、国の輸出関係の表彰を受けた実績などを記載し、 申請人を引き続き雇用し、報酬を安定的に支払える経営基盤があることを示しています。
更新の「相当性」——在留状況に問題がないことを資料で裏付ける
在留期間の更新では、在留資格に当てはまるかどうかに加えて、更新を認めるのが適当かどうか(相当性)が判断されます。 出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」では、素行が不良でないこと、 納税義務を履行していること、入管法に定める届出等の義務を履行していることなどが考慮される事項として挙げられています。
- 素行:在留期間中、交通違反を含めて処分歴がなく、入管法令違反もないこと
- 納税・社会保険:住民税等を滞納なく納付し、健康保険・厚生年金保険に加入していること(直近2年度分の納税証明書を添付)
- 届出義務:住居地の変更届出や所属機関等に関する届出を適時に行っていること(在留カード裏面の記載で確認)
- 活動の継続性:許可された通訳・翻訳の業務を変更なく続けており、会社も今後同じ業務で雇用を続ける意思と能力があること
結果として、審査中に追加資料の提出を求められることはなく、申請から約1か月で更新が許可されました。 許可された在留期間は、希望どおりの5年でした。
主に準備・提出した資料
技人国の更新申請(カテゴリー3)で提出した主な資料
- 在留期間更新許可申請書・写真・パスポート・在留カード
- 在留期間更新許可申請に係る理由書(会社名義・当事務所作成)
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(カテゴリーの確認)
- 申請人の住民税の課税証明書・納税証明書(直近2年度分)、給与所得の源泉徴収票
- 日本語能力試験の認定書(N1)
- 所属機関の代表に関する申告書
時系列
よくある質問
まとめ——技人国(通訳・翻訳)の更新で押さえたいポイント
- 通訳・翻訳は「国際業務」の代表的な業務。取引先数・注文件数などの業務量を具体的に示す
- 大学・大学院の卒業者が翻訳・通訳・語学の指導に従事する場合は、3年以上の実務経験は不要
- カテゴリー3の会社は、理由書で事業内容と経営の安定性を丁寧に伝える
- 更新の相当性は、素行・納税・届出義務・活動の継続性を資料で裏付ける
- 在留期間は審査側が決定する。在留状況や会社の状況をそろえて示すことで、3年から5年へと長い期間が認められることもある
技人国の更新は、職務内容や会社の状況、在留中の手続きの履行状況などによって、準備すべき資料や説明のポイントが異なります。 具体的な手続きについては、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。
行政書士 加治屋事務所|東京都中央区日本橋エリア
在留資格・外国人雇用に関するご相談は当事務所まで

