「人手不足の介護現場で外国人を採用したいが、特定技能『介護』は他の分野と何が違うのか分からない」—そんな人事担当者・施設運営者の方は多いのではないでしょうか。
介護分野は、協議会への加入、事業所単位の人数枠、労働者派遣の禁止といった独自ルールが定められており、製造業や外食業などとは受入れの進め方が大きく異なります。
さらに令和7年(2025年)には、これまで認められていなかった訪問系サービス(訪問介護等)への従事が条件付きで解禁され、実務が一段と複雑になりました。
本記事では、特定技能「介護」で外国人を受け入れる際の業務範囲・技能水準・日本語要件・事業所要件・協議会・訪問介護の追加要件までを、2026年6月時点の一次情報をもとに体系的に整理します。読み終える頃には、自社が次に何を確認すべきかが具体的に見えてくるはずです。
【筆者プロフィール】
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。 また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
特定技能「介護」とは|制度の位置づけと業務範囲
特定技能(とくていぎのう)は、人手不足が深刻な分野で一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるために2019年に創設された在留資格です。
介護分野はその対象分野の一つで、出入国在留管理庁・厚生労働省が共同で定める「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」および運用要領(別冊)に基づいて運用されています。
特定技能「介護」の1号で従事できるのは、身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴・食事・排せつ・整容・衣服着脱・移動の介助等)を中心とした業務です。
あわせて、レクリエーションの実施や機能訓練の補助といった付随する支援業務にも従事できます。また、日本人職員が通常行う関連業務(お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充・管理など)に付随的に従事することは差し支えありませんが、運用要領上、専ら関連業務にのみ従事させることは認められていません。
ここで企業がまず押さえるべきは、介護分野には特定技能「2号」が設定されていないという点です。
熟練した技能を持つ外国人介護人材は、介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」へ移行する道が想定されているため、介護分野では特定技能2号での受入れは行われていません。
長期就労を見据えるなら、特定技能1号(在留期間は通算で上限あり)から介護福祉士・在留資格「介護」へのキャリアパスを描くことになります。
特定技能制度の基本はこちら
出入国在留管理庁の公式案内
出入国在留管理庁「特定技能制度」
介護で求められる技能水準と日本語能力|試験と免除ルート
特定技能「介護」の在留資格で受け入れるには、原則として次の試験への合格等が必要です(2026年6月時点)。
技能水準
- 介護技能評価試験(または同等以上と認められるもの)
日本語能力水準
- 「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に加えて
- 介護日本語評価試験
介護分野の特徴は、一般的な日本語試験にプラスして「介護日本語評価試験」が求められる点です。これは介護現場特有の語彙・コミュニケーションを評価するもので、他分野には無い要件です。
一方、次のいずれかに該当する場合は試験が免除または一部免除されます。
| ルート | 介護技能評価試験 | 日本語試験 | 介護日本語評価試験 |
| 介護職種・介護作業の技能実習2号を良好に修了 | 免除 | 免除 | 免除 |
| 介護以外の職種の技能実習2号を良好に修了 | 必要 | 免除 | 必要 |
| 介護福祉士養成施設修了 | 免除 | 免除 | 免除 |
| EPA介護福祉士候補者として在留期間満了(4年間) | 免除 | 免除 | 免除 |
特に注意したいのが、介護以外の技能実習2号修了者です。この場合、国際交流基金日本語基礎テストおよび日本語能力試験(N4以上)は免除されますが、介護技能評価試験および介護日本語評価試験は必要という点を見落とさないようにしてください。
受入事業所が満たすべき要件|介護等の業務・人数枠
特定技能「介護」の外国人を受け入れられるのは、介護福祉士の受験資格に必要な「実務経験」として認められる介護業務を行う事業所です。
そのため、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム、デイサービスなどが主な受入先となります。
一方、訪問介護などの訪問系サービスでは、原則として特定技能1号外国人を受け入れることはできません。
そして介護分野で特に重要なのが、事業所単位の人数枠です。1号特定技能外国人の数は、その事業所の「日本人等」の常勤介護職員の総数を超えてはならないとされています。
この「日本人等」には、次の外国人材が含まれます。
- 介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
- 在留資格「介護」により在留する者
- 永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者
逆に、技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は「日本人等」に含まれません。
また、ここでいう介護職員とは「介護等を主たる業務として行う常勤職員」を指し、施設の事務職員や就労支援を行う職員、看護業務を行う看護師・准看護師は原則として算定基準に含まれません。
人数枠の計算を誤ると受入れ計画そのものが崩れるため、自社の常勤介護職員数を正確に把握しておくことが出発点になります。
外国人採用の方法を比較する
協議会への加入と派遣禁止|介護分野に特有のルール
協議会への加入義務
介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる場合、在留諸申請を行う前に、厚生労働大臣が設置する「介護分野における特定技能外国人の受入れに関する協議会」へ加入し、加入後は協議会に必要な協力を行う必要があります。協力を行わないなどした場合には基準を満たさず、受入れができなくなります。
実務上の重要ポイントとして、令和6年(2024年)6月15日以降は、初めて1号特定技能外国人を受け入れる場合であっても、在留諸申請の際に協議会の構成員であることの証明書の提出が必要になっています。
「採用が決まってから協議会に入ればよい」という順序では間に合わないため、スケジュール設計の最初の段階で協議会加入を組み込むことが欠かせません。
協議会加入が間に合わないときの選択肢
労働者派遣の禁止
介護分野の上陸基準(告示)では、特定技能雇用契約において当該外国人を労働者派遣の対象としない旨を定めることとされています。
つまり、1号特定技能外国人を派遣することも、派遣された者を受け入れることもできません。仮にこれに反して派遣・受入れを行った場合、出入国に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を行ったものとして、以後5年間、特定技能外国人の受入れができなくなるおそれがあります。
介護分野では直接雇用が大原則である点を、現場運用として徹底してください。
令和7年に解禁された訪問系サービス(訪問介護)の追加要件
これまで特定技能「介護」の外国人は、利用者の居宅でサービスを提供する訪問系サービス(訪問介護等)に従事できませんでした。
しかし制度が見直され、厚生労働省の公表によれば、特定技能については令和7年(2025年)4月21日から(技能実習は令和7年4月1日から)、一定の要件のもとで訪問系サービスへの従事が認められました。
訪問系サービスに従事させる場合は、施設系の要件に上乗せして、概ね次のような対応が求められます(2026年6月時点)。
- 日本人職員と同様に、介護職員初任者研修課程等の修了が必要
- 提供するサービスの質の担保の観点から、原則として介護事業所等での実務経験が1年以上ある外国人のみを従事させる(例外的に1年未満で従事させる場合は、N2相当などより高い日本語能力に限定し、同行訪問期間を延ばす等の措置が必要)
- 訪問系サービスの基本事項・生活支援技術・利用者や家族とのコミュニケーション・緊急時対応等を含む講習の実施
- 一人で適切に対応できると認められるまでの一定期間、サービス提供責任者等による同行訪問(OJT)の実施
- キャリアアップ計画の作成
- ハラスメント対策(対応マニュアルの作成・共有、相談窓口の設置等)
- ICTの活用を含む緊急時の連絡体制・環境整備
- 訪問する可能性がある利用者・家族への書面交付による説明と署名の取得
加えて、訪問系サービスに従事させる際の遵守事項等は、地方出入国在留管理局への申請時ではなく、巡回訪問等実施機関(公益社団法人 国際厚生事業団=JICWELS)において、従事させる前に確認を受ける運用となっています。書類の提出方法等は同機関のページで在留資格ごとに案内されています。
厚生労働省の公式案内
厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
巡回訪問等実施機関(JICWELS)の案内
受入れまでの流れと必要書類
特定技能「介護」の受入れは、おおむね次の順序で進みます(個別事情により前後します)。
- 自社が介護等の業務を行う事業所要件を満たすか確認する
- 協議会へ加入する(在留諸申請の前)
- 候補者が技能試験・日本語試験の合格等(または免除ルート)を満たすか確認する
- 事業所単位の人数枠(日本人等の常勤介護職員数以下)を確認する
- 特定技能雇用契約・1号特定技能外国人支援計画を整え、在留諸申請を行う
- (訪問系サービスに従事させる場合)巡回訪問等実施機関での要件確認を受ける
主な確認対象書類としては、介護分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(分野参考様式第1-1号)、業務を行わせる事業所の概要書(分野参考様式第1-2号)、協議会の構成員であることの証明書、各種試験の合格証明書の写し等が挙げられます。なお、受入れ後に外国人が従事する事業所に変更がある場合は、特定技能雇用契約変更の届出が必要です。
支援体制を自社で整えるか、登録支援機関に委託するかも早めに方針を固めておくとよいでしょう。
自社支援の要件を確認する
よくある質問(FAQ)
- Q特定技能「介護」には2号があり、長く働いてもらえますか?
- A
介護分野には特定技能2号が設定されていません。運用要領上、熟練した技能を有する人材は介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」で在留する道が想定されているためです。長期就労を見据える場合は、特定技能1号から介護福祉士・在留資格「介護」へのキャリアパスを検討することになります。
- Q協議会には、最初の1人を受け入れる前から加入が必要ですか?
- A
はい。介護分野では在留諸申請の前に協議会へ加入する必要があり、令和6年6月15日以降は、初めて受け入れる場合でも在留諸申請の際に協議会の構成員であることの証明書の提出が求められます。採用が決まってからの加入では間に合わないことが多いため、スケジュールの最初に組み込むことをおすすめします。
- Q派遣会社から特定技能の介護人材を派遣してもらうことはできますか?
- A
できないと解されます。介護分野の上陸基準(告示)で、特定技能雇用契約において当該外国人を労働者派遣の対象としない旨を定めることとされており、派遣・受入れともに認められていません。違反した場合は以後5年間受入れができなくなるおそれがあるため、直接雇用が前提です。
- Q訪問介護で外国人に働いてもらえると聞きましたが、すぐに任せられますか?
- A
令和7年4月21日(特定技能の場合)から訪問系サービスへの従事が解禁されましたが、施設系の要件に加えて初任者研修課程等の修了、原則1年以上の実務経験、同行訪問によるOJT、利用者・家族への書面説明と署名、ハラスメント対策やICTを用いた緊急時体制の整備などが必要です。さらに巡回訪問等実施機関での事前確認も求められるため、即日従事とはいきません。
在留審査にかかる日数の目安
在留審査処理期間の最新動向|経営管理ビザ169日に長期化〔2026年版〕
- Q訪問介護で外国人に働いてもらえると聞きましたが、すぐに任せられますか?
- A
令和7年4月21日(特定技能の場合)から訪問系サービスへの従事が解禁されましたが、施設系の要件に加えて初任者研修課程等の修了、原則1年以上の実務経験、同行訪問によるOJT、利用者・家族への書面説明と署名、ハラスメント対策やICTを用いた緊急時体制の整備などが必要です。さらに巡回訪問等実施機関での事前確認も求められるため、即日従事とはいきません。
在留審査にかかる日数の目安
- Q介護以外の技能実習2号を修了していれば、試験は全部免除されますか?
- A
いいえ。介護以外の職種の技能実習2号を良好に修了した場合、国際交流基金日本語基礎テストと日本語能力試験(N4以上)は免除されますが、介護技能評価試験および介護日本語評価試験免除されないと解されます。免除範囲は修了した職種・作業によって異なるため、個別に確認が必要です。
まとめ
特定技能「介護」は、身体介護等を中心に外国人を受け入れられる一方で、協議会への事前加入、事業所単位の人数枠、労働者派遣の禁止、そして令和7年に解禁された訪問系サービスの追加要件など、他分野にはない独自ルールが重なる分野です。
さらに2号が無く、長期就労は在留資格「介護」へのキャリアパスを前提とする点も特徴的です。これらの要件は順序を誤ると受入れ計画自体が止まってしまうため、早い段階で全体像を押さえておくことが重要です。
具体的な手続きは個別事情によって異なるため、自社の状況に即した進め方については、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。

