「ドライバーが足りない」――2024年4月の時間外労働上限規制(いわゆる物流の2024年問題)も重なり、トラック・バス・タクシー業界の人手不足は年々深刻になっています。
その打開策として注目されているのが、2024年に特定技能の対象へ加わった「自動車運送業分野」です。
ただし、この分野は他分野にはない独自ルールが多く、トラック・バス・タクシーの3区分ごとに運転免許・日本語要件・研修の有無が異なります。
「自社の認証は足りているのか」「海外の免許でそのまま運転させられるのか」「派遣で受け入れられるのか」――人事担当者の方が最初につまずきやすい論点を、この記事では2026年1月の運用方針改正まで反映して整理します。受入れまでの全体像をつかみ、採用計画を立てる土台としてお役立てください。
【筆者プロフィール】
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
特定技能「自動車運送業」とは|制度の概要と開始時期
特定技能「自動車運送業分野」は、深刻なドライバー不足に対応するため、2024年(令和6年)3月29日の閣議決定により特定技能制度の対象分野として追加された比較的新しい分野です。
その後、2024年12月に特定技能1号評価試験の受付が始まり、2025年1月17日に受入れ企業・登録支援機関の協議会加入受付が開始されました。
実際の就労も動き出しており、2025年3月にトラック分野で、2025年7月30日にはタクシー分野で初の特定技能ドライバーが乗務を開始したと公表されています。
押さえておきたい前提として、自動車運送業分野で取得できるのは現時点では特定技能1号のみで、特定技能2号や技能実習(育成就労)の設定はありません。在留期間の通算上限がある1号での受入れになる点は、長期雇用を見据える際の留意点です。
なお、制度創設時に示された受入れ見込み数は、5年間で最大2万4,500人とされています。制度・運用は改正が頻繁にあるため、必ず最新の一次情報をご確認ください。
特定技能制度の基本はこちら
特定技能制度の公式ページ
3つの業務区分(トラック・バス・タクシー)と対象業務
自動車運送業分野は、次の3つの業務区分に分かれており、区分ごとに必要な免許・試験・要件が異なります。
| 業務区分 | 主な対象事業 | 主な業務内容 | 必要な運転免許 |
| トラック | 一般貨物自動車運送事業 等 | 事業用自動車(トラック)の運転と付随業務 | 第一種運転免許(普通・中型・大型) |
| タクシー | 一般乗用旅客自動車運送事業 | 事業用自動車(タクシー)の運転と付随業務 | 第二種運転免許 |
| バス | 乗合・貸切・特定旅客自動車運送事業 | 運行前後の点検、安全運行、乗務記録作成、乗客対応 等 | 第二種運転免許 |
ポイントは、旅客を直接運ぶバス・タクシーには第二種運転免許が必要で、トラックよりも高い安全管理・コミュニケーション能力が求められる設計になっていることです。
自社がどの区分で受け入れるのかによって準備内容が大きく変わるため、最初に区分を確定させることが実務の出発点になります。
外国人本人が満たす要件①|運転免許と外免切替
この分野で最大の関門が「日本の運転免許」です。国際運転免許証のみでは事業用自動車の運転業務には従事できません。必ず日本の運転免許が必要で、区分に応じて以下が求められます。
- トラック:第一種運転免許(運転する車両に応じて普通・中型・大型)
- バス・タクシー:第二種運転免許
母国で免許を持っている方は、日本の免許への切替手続き(いわゆる「外免切替」)を行うか、日本国内の自動車教習所で新規取得することになります。
第二種免許や大型免許は、外免切替後に段階的に取得が必要となるケースもあり、相応の期間と費用がかかります。
免許取得・研修のための準備期間として在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」が用意されている点は、第6章で解説します。
警察庁外国免許切替の案内
外国人本人が満たす要件②|評価試験と日本語要件【2026年1月改正】
本人要件のもう一つの柱が、技能を測る評価試験と日本語要件です。
まず技能面では、区分ごとに実施される「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」(一般財団法人日本海事協会(ClassNK)が実施)に合格する必要があります。運転技能のほか、交通法規や安全管理、業務知識が問われます。
日本語要件は、2026年(令和8年)1月23日の運用方針改正で見直され、区分によって次のように整理されています(CEFR・日本語教育の参照枠による水準。JLPTまたはJFT-Basicで判定)。
| 区分 | 日本語要件(2026年6月時点) |
| トラック | A2.2(JLPT N4相当)以上 ※改正前から変更なし |
| 貸切バス | B1(JLPT N3相当)以上 |
| 乗合バス・タクシー | A2.2(JLPT N4相当)以上に緩和 ※条件付き |
改正のポイントは、、合格者が伸び悩んでいた乗合バス・タクシーの要件をN3相当からN4相当へ引き下げたことです。
ただし無条件の緩和ではなく、B1(N3相当)未到達者については、本人同意のもとで「日本語学習プラン」を作成し(1号取得から1年以内の試験合格を見据える)、一定の場面で「日本語サポーター」を乗務させる等の条件が付されると整理されています。
離島・半島の乗合バスについては、営業所との連絡体制を前提にN4相当での単独乗務も可とされています。
このあたりは運用要領で細かく定められており、個別事情によって取扱いが分かれ得る部分です。最新の運用は出入国在留管理庁・国土交通省の公表資料でご確認ください。
在留資格審査の3つの視点を確認する
出入国在留管理庁の運用方針・運用要領
評価試験の実施案内(日本海事協会)
受入企業が満たす要件|協議会・認証・新任運転者研修
自動車運送業分野は、受入企業(特定技能所属機関)側にも他分野より多くの上乗せ要件が課されています。
主なものは次のとおりです。
- 事業者の資格:道路運送法に規定する自動車運送事業を経営していること(第二種貨物利用運送事業を含む)。
- 協議会への加入:国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」の構成員になり、必要な協力・調査への協力を行うこと。
- 認証の取得:一般財団法人日本海事協会が実施する運転者職場環境良好度認証制度(働きやすい職場認証制度)の認証を受けているか、または全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定する「安全性優良事業所(Gマーク)」を有していること。
- 新任運転者研修の実施:バス運送業・タクシー運送業では、受け入れる外国人に新任運転者研修を実施すること(トラックでは義務ではありません)。
- 直接雇用に限る:労働者派遣による受入れはできません。
特に見落とされやすいのが認証要件です。「働きやすい職場認証」「Gマーク」のいずれも取得に一定の期間がかかるため、採用を決めてから慌てて準備するとスケジュールが破綻しがちです。
協議会加入も、事務局での確認に1か月程度を要するとされ、在留資格申請の前提となります。認証・協議会加入は、人材選定と並行して早めに着手するのが実務上の鉄則と言えます。
上乗せ要件が多い建設分野との比較はこちら
在留審査にかかる日数の目安
国土交通省の公式案内
受入れの流れと「特定活動(準備期間)」の使い方
受入れは、おおむね「①人材選定・各試験合格 → ②在留資格の取得・入国 → ③日本の運転免許取得・研修 → ④特定技能1号で就労開始」という流れになります。
ここで重要なのが、免許取得や新任運転者研修の修了に時間を要する点です。
来日後すぐに事業用自動車を運転できるわけではないため、その準備期間をカバーする在留資格として「特定活動(特定自動車運送業準備)」が設けられています。この期間中は運転業務以外の関連業務に従事しながら、免許取得や研修受講を進めることが想定されています。
なお、すでに日本に在留している外国人が直接「特定技能1号」へ移行できるかは区分で異なります。
日本の運転免許を持ちトラック運送に従事する場合は、直接1号へ変更できる余地があります。一方、バス・タクシーは新任運転者研修の修了が1号取得の条件となるため、留学中のアルバイトで研修を受講したなどの特別な事例を除き、原則として直接1号へ移行することは難しいと解されます。
個別の在留状況によって最適な手順は変わるため、設計段階での確認が欠かせません。
協議会加入が間に合わないときの選択肢
よくある質問(FAQ)
- Q自社だけで支援を行えますか?登録支援機関への委託は必須ですか?
- A
支援体制基準を満たせば自社支援も可能です。ただし、直近2年間に外国人労働者の受入れ・支援の実績がない、または適切な支援体制を整えられない場合は、登録支援機関への委託が必要と整理されています。委託先は協議会の構成員であることが求められる点も注意が必要です。
自社支援の要件を詳しく見る
- Q海外で取得した運転免許のまま、日本で運転業務に就かせられますか?
- A
できません。国際運転免許証のみでは事業用自動車の運転業務に従事できず、日本の運転免許(トラックは第一種、バス・タクシーは第二種)が必要です。外免切替または教習所での取得が前提となり、その準備期間には「特定活動(準備期間)」の活用が想定されています。
- Q2026年1月の改正で、バス・タクシーもN4で受け入れられるようになったのですか?
- A
乗合バス・タクシーについては、A2.2(N4相当)以上へ緩和されました。ただし日本語学習プランの作成や日本語サポーターの乗務など条件が付され、貸切バスはB1(N3相当)以上のままです。条件の詳細は運用要領によるため、個別の確認が必要です。
- Q派遣会社から特定技能ドライバーを受け入れることはできますか?
- A
できません。自動車運送業分野は直接雇用に限られます。直接雇用を前提に許可を得た外国人を他社へ派遣した、または派遣を受け入れた場合、入管法違反等とみなされ、受入れが一定期間停止される可能性があると指摘されています。
- Q協議会へはいつ加入すればよいですか?
- A
協議会加入は在留資格申請の前提です。事務局での確認に1か月程度を要するとされるため、受入れ予定から逆算して1〜3か月前には加入申請を済ませておくのが安全と解されます。
まとめ
特定技能「自動車運送業」は、トラック・バス・タクシーの3区分ごとに運転免許・評価試験・日本語要件が異なり、企業側にも協議会加入・認証取得・新任運転者研修・派遣禁止といった独自の上乗せ要件が課される、準備の重い分野です。
2026年1月の運用方針改正で乗合バス・タクシーの日本語要件がN4相当へ緩和された一方、条件付きである点も見落とせません。
免許取得や認証準備には時間がかかるため、人材選定と並行した早めの着手が成否を分けます。具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。

