「工場の人手が足りず、外国人の採用を検討したいが、特定技能『飲食料品製造業』の要件が複雑でよく分からない」—食品・飲料メーカーやそう菜・パン・水産加工などの現場を抱える人事担当者から、こうしたご相談をよくいただきます。
飲食料品製造業分野は、特定技能14分野の中でも在留者数が最も多い分野の一つで、受入れ規模も大きい一方、対象となる事業所の範囲や協議会加入、派遣禁止など、押さえるべき固有のルールが少なくありません。
本記事では、対象業務と受入れ対象事業所、特定技能1号・2号それぞれの要件、受入れ企業(特定技能所属機関)が満たすべき固有基準、そして採用から就労までの手続きの流れを、2026年7月時点の一次情報に基づいて整理します。自社が受入れ対象に当てはまるかどうかを判断する材料としてご活用ください。
【 筆者プロフィール】
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
特定技能「飲食料品製造業」とは|対象業務と受入れ規模
特定技能「飲食料品製造業」分野は、深刻な人手不足に対応するため、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れる在留資格「特定技能」の対象分野の一つです。
運用要領では、この分野の業務を「飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工及び安全衛生の確保」と定めています。
ここでいう「製造・加工」とは、原料の処理、加熱、殺菌、成形、乾燥等の一連の生産行為を指します。
運用要領上、単なる選別や包装(梱包)のみの作業は「製造・加工」には当たらないとされている点に注意が必要です。
また「安全衛生の確保」とは、使用する機械の安全確認や作業者の衛生管理など、業務上の安全衛生及び食品衛生の確保に係る業務をいいます。
特定技能外国人は、これらの主たる業務に従事することが前提です。日本人が通常従事する関連業務(原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理作業など)に付随的に従事することは差し支えありませんが、専ら関連業務のみに従事させることは認められません。
特定技能制度の全体像はこちら
受入れ規模については、政府の受入れ見込数として、令和11年3月末までに13万3,500人が設定されています。
これは特定産業分野の中でも最大級の規模で、飲食料品製造業分野は特定技能の在留者数が全分野で最も多い分野の一つとなっています(在留者数は時点により変動するため、最新値は出入国在留管理庁の公表統計をご確認ください)。
出入国在留管理庁「特定技能制度」

出典:農林⽔産省大臣官房新事業・⾷品産業部⾷品製造課「飲⾷料品製造業における外国人の受入れについて」
受入れ対象となる事業所|日本標準産業分類の9区分
特定技能外国人を受け入れられるのは、告示で定められた基準に基づき、事業所が主として次のいずれかの産業(日本標準産業分類)に該当する場合に限られます。
自社の事業所がこの区分に当てはまるかどうかが、受入れ可否の出発点になります。
| # | 日本標準産業分類上の区分 | 留意点 |
| ① | 中分類09 食料品製造業 | 分野の中心となる区分 |
| ② | 小分類101 清涼飲料製造業 | – |
| ③ | 小分類103 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く) | – |
| ④ | 小分類104 製氷業 | – |
| ⑤ | 細分類5621 総合スーパーマーケット | 食料品製造を行うものに限る |
| ⑥ | 細分類5811 食料品スーパーマーケット | 食料品製造を行うものに限る |
| ⑦ | 細分類5861 菓子小売業(製造小売) | 自ら製造した製品を販売 |
| ⑧ | 細分類5863 パン小売業(製造小売) | 自ら製造した製品を販売 |
| ⑨ | 細分類5896 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業 | 加工食品の製造を行うものに限る |
一方で、酒類製造業、塩製造業、医薬品製造業、香料製造業、飲食料品卸売業、各種商品小売業(⑤を除く)、飲食料品小売業(⑥〜⑨を除く)、ペットフード等の飼料製造業などは、飲食料品製造業分野には含まれません。
実務では「自社が対象か」の判断が難しいケースがあります。
例えば、飲食料品卸売業者・小売業者の専用工場(プロセスセンター)や外食事業者の集中調理施設(セントラルキッチン)など、独立した事業所で飲食料品の製造・加工を営む場合は対象となり得ます。
他方、小売業を営む事業所(⑤〜⑨を除く)が一区画で製造・加工を行うだけでは、主要な経済活動が製造・加工ではないため対象外です。
前提として、ここでは食品の製造を他社から請け負う製造請負会社が自ら特定技能外国人を雇用して受け入れる場合を想定します。
この場合も、雇用主である請負会社の事業所が主として上記区分の製造・加工を行っていれば対象になります。
判定のポイントは契約の名前(請負かどうか)ではなく、その事業所が実際に製造・加工を行っているかどうかです。
・請負会社が自社の事業所で実際に製造・加工まで行っている → 対象になり得る
・請負でも、箱詰め・梱包や荷役など付随的な作業だけを行っている → 「製造・加工」に当たらず対象外
なお、人材派遣は請負とは異なり、労働者を送り込むだけで自社の事業所で製造・加工を行うわけではありません。
そもそも飲食料品製造業分野では特定技能外国人の派遣自体が認められていない(派遣・受入れとも不可)点にも注意が必要です。
判断に迷う場合は、協議会への加入申請前に農林水産省へ事前確認することが推奨されています。
農林水産省 食品産業特定技能協議会
特定技能1号の要件|技能試験・日本語ルート・技能実習2号ルート
飲食料品製造業分野で特定技能1号の外国人として就労するには、技能水準と日本語能力水準の双方を満たす必要があります。取得ルートは大きく「試験合格ルート」と「技能実習2号修了ルート」の2つです。
試験合格ルート
- 技能水準:「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」に合格していること
- 日本語能力:「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」又は「日本語能力試験(JLPT)N4以上」に合格していること
技能実習2号修了ルート
運用要領別表に記載された職種・作業の技能実習2号を良好に修了した者は、対応する技能試験が免除されます。
さらに、修了した技能実習2号の職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した者は、日本語試験(JFT-Basic・JLPT N4以上)がいずれも免除されます。技能実習からの移行は、実務上よく用いられるルートです。
なお、試験免除を受けるには、技能実習2号を良好に修了したことを証する書類(技能検定3級又はこれに相当する技能実習評価試験の実技試験合格証明書など)の提出が必要です。
合格していない場合は、技能試験・日本語試験を受験して合格するか、実習実施者が作成した技能等の修得状況を評価した文書の提出が求められます。

出典:農林⽔産省大臣官房新事業・⾷品産業部⾷品製造課「飲⾷料品製造業における外国人の受入れについて」
特定技能2号の要件|技能試験+管理等実務経験2年
飲食料品製造業分野は、令和5年(2023年)8月31日に特定技能2号の対象分野に追加されました。
特定技能2号は在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族帯同も可能となる、熟練人材の長期就労ルートです。2号として就労するには、次の2つを満たす必要があります。
- 「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」に合格していること
- 飲食料品製造業分野において、複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての実務経験(管理等実務経験)を2年以上有すること
運用要領によれば、「複数の作業員」とは2名以上を指し、指導・監督を受ける者には日本人が含まれ、国籍は問いません。
指導対象は必ずしも同一人物である必要はなく、シフトの都合等で一時的に2人以上の指導を行わない期間があっても差し支えないとされています。
また「工程を管理する者」とは、事業所責任者(工場長等)が行う管理業務を補助する立場を指し、担当部門長・ライン長・班長等の役職が想定されています。
この実務経験は客観的に証明する必要があり、1号特定技能外国人を「工程を管理する者」として従事させる際は、辞令や職務命令書等をもって役職を命じ、業務に従事させることが求められます。
1号から2号への移行を見据える場合は、早い段階でこうした役職付与と記録の整備を進めておくと、後の証明がスムーズになります。
受入れ企業(特定技能所属機関)が満たすべき固有基準|協議会・派遣禁止
飲食料品製造業分野には、制度全体の基準に加えて、分野固有の基準が告示で定められています。特に重要なのが「協議会加入」と「派遣禁止」です。
食品産業特定技能協議会への加入
受入れ企業は、農林水産省・関係業界団体・登録支援機関等で構成される「食品産業特定技能協議会」(飲食料品製造業分野と外食業分野が共同で設置)の構成員となる必要があります。
令和6年6月15日以降は、地方出入国在留管理局への在留諸申請の際に、初めて受け入れる場合であっても、協議会の構成員であることの証明書の提出が必要です。提出がない場合、その申請は不許可となる点に注意してください。
登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部を委託する場合は、その登録支援機関も協議会に加入し、要件に該当している必要があります。
協議会加入が間に合わないときの対応

出典:農林⽔産省大臣官房新事業・⾷品産業部⾷品製造課「飲⾷料品製造業における外国人の受入れについて」
派遣(労働者派遣)の禁止
飲食料品製造業分野では、特定技能外国人を労働者派遣の対象とする雇用契約を締結することはできません。
派遣する側にも、派遣された者を受け入れる側にもなれず、直接雇用が原則です。これに違反した場合、出入国に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を行ったものとして、以後5年間は特定技能外国人の受入れができなくなります。
その他の固有基準
- 雇用契約の締結前に、キャリアアップのための計画(キャリアアッププラン)について書面を交付し、又は提供して説明すること
- 特定技能外国人から求めがあった場合、当該分野に係る実務経験を証明する書面を交付すること
- 農林水産省・協議会が行う調査、指導、情報共有等の活動に必要な協力を行うこと
なお、支援体制を自社で整えるか登録支援機関に委託するかは、受入れ企業の選択によります。
自社支援を選ぶ場合は、義務的支援を確実に実施できる体制が求められます。
自社で支援する場合の要件
採用から就労までの手続きの流れ
飲食料品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる際の一般的な流れは、次のとおりです(個別事情により順序・要否は変わります)。
- 自社の事業所が対象区分(日本標準産業分類の9区分)に該当するか確認する。判断に迷う場合は農林水産省へ事前確認する。
- 食品産業特定技能協議会へ加入する(在留諸申請の前に構成員となっておく)。
- 対象人材を確保する。技能試験合格者、又は該当する技能実習2号の修了者を採用し、日本語要件(JFT-Basic/JLPT N4以上、免除の有無)を確認する。
- 特定技能雇用契約を締結する。契約前にキャリアアッププランを書面で交付・説明する。
- 1号特定技能外国人支援計画を作成する(自社支援又は登録支援機関へ委託)。
- 地方出入国在留管理局へ在留資格の申請(認定・変更・更新)を行う。協議会の構成員であることの証明書を添付する。
- 許可後、就労を開始する。受入れ後は各種届出や協議会・農林水産省への協力を継続する。
在留資格の審査には一定の期間がかかります。採用計画を立てる際は、直近の審査処理期間の目安も踏まえてスケジュールに余裕を持たせることをおすすめします。
審査にかかる日数の目安
よくある質問(FAQ)
- Q単純な包装や仕分けだけの作業に従事させてもよいですか?
- A
運用要領上、単なる選別・包装(梱包)のみの作業は「製造・加工」に当たらないとされ、専ら関連業務のみに従事させることは認められません。特定技能外国人は、試験等で確認された技能を要する主たる業務(製造・加工及び安全衛生の確保)に従事することが前提と解されます。
- Q派遣で特定技能外国人を受け入れることはできますか?
- A
飲食料品製造業分野では、告示により労働者派遣の対象とする雇用契約が認められておらず、直接雇用が原則です。違反した場合は以後5年間受入れができなくなるおそれがあるため、指揮命令系統を自社で担保する必要があります。
- Q食品産業特定技能協議会には、いつまでに加入すればよいですか?
- A
令和6年6月15日以降は、在留諸申請の際に協議会の構成員であることの証明書の提出が必要です。つまり、申請の前に加入を済ませておく必要があります。提出がないと申請が不許可となる点に注意が必要です。
- Q登録支援機関に支援を委託すれば、自社は協議会に加入しなくてよいですか?
- A
いいえ。特定技能所属機関(受入れ企業)自身の加入が必要です。加えて、1号支援計画の全部を委託する登録支援機関も、協議会に加入し要件に該当していることが求められます。
- Qスーパーマーケット内の食品製造部門でも受け入れられますか?
- A
総合スーパーマーケット・食料品スーパーマーケットのうち、青果・鮮魚・食肉加工、ベーカリー、そう菜製造等の食品製造を行う事業所は対象となり得ます。ただし協議会加入時に、特定技能外国人を販売業務に従事させない旨の誓約書の提出が必要とされています。
- Q技能実習2号から試験免除で特定技能1号に移行できますか?
- A
運用要領別表に記載された職種・作業の技能実習2号を良好に修了した場合、対応する技能試験が免除されます。また、職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した者は日本語試験も免除されます。証明書類の準備が前提となります。【内部リンク候補:外国人採用の3つの方法(gaikokujin-saiyou-3ways)】
外国人採用の方法を比較する
まとめ
特定技能「飲食料品製造業」は、受入れ規模が大きく人手不足に悩む食品・飲料業界にとって有力な選択肢です。
もっとも、対象となるのは日本標準産業分類の9区分に該当する事業所に限られ、業務も「製造・加工及び安全衛生の確保」が中心で、単なる包装のみでは要件を満たしません。
加えて、食品産業特定技能協議会への事前加入、派遣禁止、キャリアアッププランの書面交付など、分野固有の基準を押さえる必要があります。自社が対象に該当するか、どのルートで人材を確保するかは、事業所の実態によって判断が分かれます。
具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。
