特定技能「宿泊」の要件・業務・協議会加入を行政書士が解説【2026年版】

特定技能

宿泊業では、インバウンド需要の回復と慢性的な人手不足を背景に、外国人材の受入れを検討する施設が増えています。その受け皿として注目されるのが在留資格「特定技能」ですが、宿泊分野には旅館業の許可や宿泊分野特定技能協議会への加入といった、他分野にはない固有のルールがあります。

この記事は、ホテル・旅館で特定技能外国人の採用を検討している人事・採用担当者の方に向けて、特定技能「宿泊」で従事できる業務・できない業務、外国人材と受入企業それぞれの要件、協議会加入の手続きとタイミングを、一次情報(宿泊分野の運用要領)をもとに整理したものです。

読み終える頃には、自社が受入れ要件を満たすか、何から準備すべきかの全体像がつかめるはずです。

【筆者プロフィール】

行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級

長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。

特定技能「宿泊」とは|1号・2号の違いと制度の全体像

特定技能は、人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を即戦力として受け入れる在留資格で、宿泊分野もその対象分野の一つに含まれています。

宿泊分野には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2区分があります。

特定技能1号は「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を要する業務に従事する在留資格で、宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事します。在留期間は通算で上限があり、家族の帯同は原則認められません。

特定技能2号は「熟練した技能」を要する区分で、複数の従業員を指導しながら同様の宿泊サービス業務に従事します。宿泊分野の2号は令和5年(2023年)8月31日から受入れが開始された比較的新しい区分で、在留期間の更新に通算上限がなく、要件を満たせば家族帯同や将来的な永住許可申請の道も開かれる点が1号との大きな違いです。

まずは「自社が受け入れたいポジションが、特定技能で従事できる業務にあたるか」を確認することが出発点になります。特定技能制度そのものの基礎を押さえたい場合は、制度全体を解説した記事も参照してください。

特定技能制度の基本を確認する

特定技能制度とは?企業が知るべき外国人材受入れの完全ガイド

特定技能「宿泊」で従事できる業務・できない業務

宿泊分野の運用要領では、特定技能外国人が主として従事する業務を、宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務と定めています。

試験等で立証された技能を用いて、これらの業務に幅広く従事することが求められます。ただし、職場の状況に応じて、許可された在留期間の一部でフロント係に配置されるなど、特定の業務のみに従事することも差し支えないとされています。

一方で、主たる業務に付随する「関連業務」については、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる範囲で、付随的に従事することが認められています。

運用要領では関連業務の例として、旅館・ホテル施設内の土産物等売店における販売業務や、施設内の備品の点検・交換業務が挙げられています。

ここで実務上重要なのが、専ら関連業務にのみ従事させることは認められないという点です。

たとえば清掃や備品交換だけを担当させるような運用は、宿泊サービスの提供という本来の趣旨から外れ、認められません。あくまで「主たる宿泊サービス業務+付随的な関連業務」という構成が前提になります。

なお、宿泊分野では特定技能外国人に風営法上の「接待」を行わせること、および風営法上の特定の施設(いわゆるラブホテル等)で就労させることは認められていません。

外国人材に求められる要件(技能試験・日本語能力ルート、技能実習ルート)

特定技能1号として宿泊分野で就労するには、原則として次の2つを満たす必要があります。

  1. 技能水準「宿泊分野特定技能1号評価試験」に合格していること
  2. 日本語能力「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格していること(そのほか「日本語教育の参照枠」A2相当以上と認められるものを含む)

これらに加え、技能実習からの移行ルートもあります。

運用要領では、「宿泊職種・接客・衛生管理作業」の第2号技能実習を良好に修了した者について技能試験を免除する取扱いが定められています。また、職種・作業の種類にかかわらず、第2号技能実習を良好に修了した者は、日本語試験(国際交流基金日本語基礎テスト・日本語能力試験N4以上)が免除されるとされています。

特定技能2号については、「宿泊分野特定技能2号評価試験」の合格に加え、実務経験の要件が課されます。

具体的には、宿泊施設において複数の従業員を指導しながら、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の業務に2年以上従事した実務経験が求められます。試験申込時に実務経験の有無が確認されるため、勤務先が発行する実務経験を証明する書面が必要になります。

観光庁 宿泊分野における外国人材受入れ

受入企業(特定技能所属機関)が満たすべき要件

宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、共通の受入れ基準に加えて、宿泊分野特有の基準が告示で定められています。主なものは次のとおりです。

  • 旅館業法上の「旅館・ホテル営業」の許可を受けて旅館業を営んでいること。運用要領では、確認書類として旅館業許可証(旅館・ホテル営業許可書)が挙げられています。
  • 簡易宿所営業・下宿営業は対象外です。いわゆるゲストハウス等での受入れを検討する際に特に注意が必要な箇所です。
  • 風営法上の特定の施設(ラブホテル等)に該当しないこと、特定技能外国人に「接待」を行わせないこと。
  • 労働者派遣(派遣)による受入れは不可です。上陸許可基準に関する告示で、労働者派遣の対象となる特定技能雇用契約を締結していないことが求められており、宿泊分野では派遣することも派遣された者を受け入れることもできません。
  • 特定技能外国人から求められた場合に、宿泊分野に関する実務経験を証明する書面を交付すること。

なお、宿泊分野には法人や事務所ごとの受入れ人数枠の制限はないとされており、この点は介護や建設など人数枠のある分野と異なります。

他分野との違いを比較したい場合は、分野別ガイドもあわせてご覧ください。

人数枠のある分野との違いを見る

特定技能「建設」完全ガイド

宿泊分野特定技能協議会への加入|申請前加入が必須に

宿泊分野で最も注意したい固有ルールが、国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」への加入です。

特定技能所属機関だけでなく、支援を委託する登録支援機関にも加入義務があります。

加入のタイミングは制度改正で厳格化されています。運用要領によれば、令和6年(2024年)6月15日以降は、地方出入国在留管理局に対する在留諸申請の際に、初めて特定技能外国人を受け入れる場合であっても、協議会の構成員であることの証明書の提出が必要です。

つまり、以前のような「入国後4か月以内に加入する」旨の誓約書による対応は原則できなくなり、在留諸申請の前に加入を済ませておく必要があるという運用になっています。

申請時に協議会の構成員であることの証明書の提出がない場合、当該申請は不許可となる旨が運用要領にも明記されています。協議会の入会手続きはオンライン(e-Gov電子申請)で行い、審査・手続きに一定の日数がかかるため、採用計画の初期段階で着手しておくことが重要です。

協議会加入が採用スケジュールに間に合わないケースの実務対応については、移行準備の特定活動を扱った記事も参考になります。

協議会加入が間に合わないときの対応

特定技能に移行できない!協議会未加入でも使える特定活動(移行準備)とは

支援体制の整備|登録支援機関への委託と自社支援

特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受入企業には1号特定技能外国人支援計画の作成と、その適正な実施が求められます。

支援には、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、相談・苦情対応など、義務的支援として定められた項目があります。

この支援を自社で実施できる体制がない場合は、登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託することができます。

宿泊分野では、登録支援機関に全部を委託する場合、その登録支援機関自身も宿泊分野特定技能協議会の構成員であること等の要件を満たしている必要があります。委託先を選ぶ際は、協議会加入の有無を必ず確認しましょう。

自社で支援を行う「自社支援」を選ぶ場合は、支援責任者・支援担当者の選任や、外国人が十分に理解できる言語での対応体制など、支援体制に関する基準を満たす必要があります。

自社支援の要件を詳しく知りたい場合は、専用記事で整理しています。

自社支援の要件を詳しく見る

【2026年版】特定技能の自社支援とは

受入れまでの流れと採用スケジュールの考え方

宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる際の大まかな流れは、次のように整理できます。

  1. 自社が受入れ要件(旅館業許可・派遣によらない直接雇用など)を満たすか確認する
  2. 候補者が技能試験・日本語要件、または技能実習修了ルートの要件を満たすか確認する
  3. 特定技能雇用契約を締結し、支援体制(自社支援か登録支援機関委託か)を決める
  4. 宿泊分野特定技能協議会に加入する(在留諸申請の前に済ませる)
  5. 支援計画を作成し、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行う

採用スケジュールを組む際は、在留審査に要する期間も見込んでおく必要があります。

審査期間は申請の種別や時期によって変動するため、余裕をもった計画が欠かせません。最新の処理期間の目安は、審査期間を分析した記事も参考にしてください。

最新の在留審査処理期間を確認する

在留審査処理期間の最新動向〔2026年版〕

なお、ホテル・旅館では、通訳・翻訳や海外向け広報など業務内容によっては「技術・人文知識・国際業務(技人国)」での採用が適する場合もあります。

ポジションによって適した在留資格が異なるため、募集職種の整理から始めるとよいでしょう。

技人国での採用が向くケースを見る

技術・人文知識・国際業務の在留資格完全ガイド

よくある質問(FAQ)

Q
ゲストハウスや民泊施設でも特定技能「宿泊」で外国人を採用できますか?
A

宿泊分野の受入れは、旅館業法上の「旅館・ホテル営業」の許可を受けた施設が対象で、簡易宿所営業・下宿営業は対象外とされています。ゲストハウス等が簡易宿所営業に該当する場合、特定技能「宿泊」での受入れはできないと解されます。自社の営業許可の種別をまず確認することをおすすめします。

Q
協議会にはいつ加入すればよいですか?入国後でも間に合いますか?
A

令和6年6月15日以降は、初めて受け入れる場合であっても、在留諸申請の際に宿泊分野特定技能協議会の構成員であることの証明書の提出が必要とされています。申請の前に加入を済ませておく必要があり、提出がない場合は不許可となる旨も運用要領に明記されています。手続きには日数がかかるため、早めの着手が重要です。

Q
特定技能外国人を清掃や配膳だけに従事させることはできますか?
A

清掃・館内備品の点検交換などは「関連業務」として付随的に従事することは差し支えありませんが、専ら関連業務のみに従事させることは認められないとされています。あくまでフロント・接客・レストランサービス等の宿泊サービス業務を主として従事することが前提となります。

Q
特定技能外国人を派遣で受け入れることはできますか?
A

宿泊分野では、上陸許可基準に関する告示により、労働者派遣の対象となる特定技能雇用契約は認められていません。派遣による受入れはできず、直接雇用が前提となります。

Q
支援は必ず登録支援機関に委託しなければなりませんか?自社では対応できませんか?
A

支援体制に関する基準を満たせば、自社で支援を行う「自社支援」も可能です。体制が整わない場合は登録支援機関への委託が選択肢となりますが、その場合、委託先の登録支援機関も宿泊分野特定技能協議会の構成員である必要があります。

自社支援の要件を詳しく見る

【2026年版】特定技能の自社支援とは

Q
特定技能2号「宿泊」はどのような場合に取得できますか?
A

「宿泊分野特定技能2号評価試験」への合格に加えて、宿泊施設で複数の従業員を指導しながら、フロント・企画広報・接客・レストランサービス等の業務に2年以上従事した実務経験が要件とされています。個別の該当性は実務経験の内容や証明書類によって判断されるため、詳細は試験実施機関の案内もご確認ください。

まとめ

特定技能「宿泊」は、フロント・企画広報・接客・レストランサービス等の宿泊サービス業務に外国人材を受け入れられる制度です。

実務上のポイントは、旅館業(旅館・ホテル営業)の許可が前提で簡易宿所・下宿は対象外であること、派遣による受入れができないこと、そして令和6年6月15日以降は在留諸申請の前に宿泊分野特定技能協議会への加入が必要になったことです。

1号・2号で要件が異なり、2号には実務経験も求められます。要件の当てはめや協議会加入・支援体制の準備は個別事情によって異なるため、具体的な手続きは行政書士 加治屋事務所までご相談ください。

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