「外国人社員の在留期間更新を申請したのに、在留期限までに結果が出ない。今この社員は合法的に働けているのだろうか」人事担当者からよく寄せられるご相談です。
実は、在留期限までに更新・変更の申請をしておけば、審査結果が出るまでの間も従前の在留資格のまま在留・就労を続けられる仕組みがあります。これが「特例期間(とくれいきかん)」です。
本記事では、特例期間が発生する条件、「2か月」という期間の正確な数え方、在留カードでの確認方法、海外出張時の注意点、そして企業がとるべき実務対応までを、出入国在留管理庁の一次情報をもとに整理します。読み終える頃には、審査が長引いても慌てず対応できる知識が身につきます。
【筆者プロフィール】
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
特例期間とは?在留期限を過ぎても在留できる制度
特例期間とは、31日以上の在留期間がある在留カードを持つ外国人が「在留期間更新許可申請」または「在留資格変更許可申請」(以下、あわせて「在留期間更新許可申請等」といいます)を行った場合に、その申請に対する処分(許可・不許可の決定)が在留期間の満了の日までに出ないときでも、一定期間は従前の在留資格のまま日本に在留し、従前の活動(就労など)を続けられる制度です。
在留期間の満了の日までに審査が終わらない場合は、在留期間の満了日以降、次のときのいずれかの早い時まで日本に滞在することができる措置になります。
- 「処分がされる時」
- 「在留期間の満了の日から2か月が経過する日が終了する時」
根拠となるのは、出入国管理及び難民認定法(入管法)第20条第6項(在留資格変更の場合)および第21条第4項(在留期間更新の場合。第20条第6項を準用)です。
出入国管理及び難民認定法
(在留資格の変更)
第二十条 6 第二項の規定による申請があつた場合(三十日以下の在留期間を決定されている者から申請があつた場合を除く。)において、その申請の時に当該外国人が有する在留資格に伴う在留期間の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、当該外国人は、その在留期間の満了後も、当該処分がされる時又は従前の在留期間の満了の日から二月を経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は、引き続き当該在留資格をもつて本邦に在留することができる。(在留期間の更新)
第二十一条 4 第二十条第四項及び第五項の規定は前項の規定による許可をする場合について、同条第六項の規定は第二項の規定による申請があつた場合について、それぞれ準用する。この場合において、同条第四項第二号及び第三号中「新たな在留資格及び在留期間」とあるのは、「在留資格及び新たな在留期間」と読み替えるものとする。
つまり特例期間は、審査の長期化によって外国人が意図せず不法残留(オーバーステイ)になってしまうことを防ぐための救済的な仕組みといえます。近年は在留審査の処理期間が長期化する傾向もあり、この制度を正しく理解しておく実務上の重要性は高まっています。

在留審査処理期間の最新動向
特例期間が発生する3つの条件
特例期間は自動的に「在留期限が切れても2か月延びる」ものではありません。次の条件を満たして初めて発生します。
- 在留カードを所持している外国人(中長期在留者)が在留期間更新許可申請または在留資格変更許可申請を行っていること。
- その申請を在留期間満了日までに行っていること。
- 在留期間が30日を超えること(在留期間が30日以下の場合は対象外)
特に重要なのは2つ目です。在留期限を1日でも過ぎてから申請した場合、特例期間は発生せず、期限を過ぎた時点でオーバーステイとなり得ます。
したがって、申請は在留期限内に必ず済ませておくことが大前提となります。なお、6か月以上の在留期間を有する方は、在留期間の満了する日のおおむね3か月前から更新申請が可能とされています。余裕をもって申請することで、特例期間に頼らずに処分を受けられる可能性が高まります。

在留カードを所持していること(中長期在留者であること)って、どういう意味ですか?

出入国管理及び難民認定法
(中長期在留者)
第十九条の三 出入国在留管理庁長官は、本邦に在留資格をもつて在留する外国人のうち、次に掲げる者以外の者(以下「中長期在留者」という。)に対し、在留カードを交付するものとする。
一 三月以下の在留期間が決定された者
二 短期滞在の在留資格が決定された者
三 外交又は公用の在留資格が決定された者
四 前三号に準ずる者として法務省令で定めるもの
つまり、具体例として、就労系(技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習等)、身分系(永住者、日本人の配偶者等、定住者等)、留学、家族滞在などの在留資格で3月を超える在留期間を有する外国人は、中長期在留者に該当するということ。
「満了から2か月」の正確な数え方と終了のタイミング
特例期間は「処分がされる時」か「満了日から2か月を経過する日が終了する時」の、いずれか早い方で終了します。言い換えると、次のどちらかが先に来た時点で特例期間は終わります。
- 審査結果(許可または不許可)が出たとき → その処分の時点で終了します。
- 結果が出ないまま、在留期間満了日から2か月が経過したとき → その満了によって終了します。
例えば在留期限が2026年8月31日の場合、更新申請を8月31日までに済ませていれば、原則として2026年10月31日ごろまでは従前の在留資格で在留・就労できると考えられます(具体的な満了日は個別の起算・暦により異なります)。
ただし、この2か月が経過しても処分が出ないという事態は通常想定されにくく、万一そのような場合は速やかに申請先の地方出入国在留管理官署へ確認することが必要です。
| 実務上の注意:特例期間は「2か月ぴったり在留できる猶予」ではなく、あくまで審査結果が出るまでの暫定的な在留を認めるものです。結果が出れば(不許可であっても)その時点で特例期間は終了します。 |
特例期間中に企業が確認すべきこと(在留カード裏面・就労可否)
特例期間中は、在留カードの表面に記載された在留期間の日付を過ぎていることがあります。この場合、企業の人事担当者は在留カードの裏面を確認してください。
窓口で在留期間更新許可申請等を行うと、在留カード裏面の「在留期間更新等許可申請欄」に申請中である旨が記載されます(オンラインによる申請の場合を除きます)。
就労については、特例期間中も従前の在留資格の範囲内で従前の活動を継続できます。したがって、技術・人文知識・国際業務などで働いていた社員は、特例期間中も同じ範囲の業務に従事できると解されます。
ただし、あくまで「従前の活動」に限られるため、在留資格変更申請の場合、まだ許可されていない新しい在留資格の活動を先取りして行うことはできません。
オンライン申請の場合は在留カード裏面に記載されないため、申請受付のメール等で申請中であることを確認・保管しておくとよいでしょう。
企業としては、社員の在留カードの写し(表裏両面)と申請受付の記録を控えておくことが、適正な雇用管理の観点から望まれます。


技術・人文知識・国際業務ビザの更新完全ガイド
出入国在留管理庁「特例期間とは?」
特例期間中の海外出張・再入国で注意すべき点
特例期間中に海外出張や一時帰国の予定が入ることがあります。申請中(特例期間中)であっても、再入国許可またはみなし再入国許可による出国自体は可能とされていますが、次の点に十分注意が必要です。
- 必ず特例期間内に日本へ戻ること。特例期間が終了するまでに再入国しないと、在留資格が失われるおそれがあります。
- 出国中も申請先の入管から連絡が来る可能性があるため、連絡が取れる状態にしておくこと。
- 帰国後は速やかに入管窓口で手続き(在留カードの受領・切替え等)を行うこと。
なお、特例期間中においても「みなし再入国許可」の対象から除外されません。
特例期間で「やってはいけない」対応と企業の実務フロー
特例期間中に最も避けたいのは、申請の安易な取り下げです。
例えば留学生を採用予定だったが内定を取り消したケースなどで、変更申請を単純に取り下げてしまうと、すでに在留期限を過ぎている場合は取り下げた瞬間に在留の根拠を失い、不法残留につながるおそれがあります。
こうした場合は取り下げではなく、出国準備のための「特定活動」への申請内容の変更など、適切な手続きを検討する必要があります。
特例期間中の取り下げの対応についてこちら
企業の実務対応チェックリスト
- 在留期限のおおむね3か月前から更新・変更申請の準備を始める(期限内申請を徹底)。
- 在留期限を過ぎている社員は、在留カード裏面の申請中記載を必ず確認する。
- 特例期間中の就労は「従前の在留資格の範囲内」に限定されていることを社内で共有する。
- 海外出張の予定がある場合は、再入国の可否と帰国期限を事前に入管へ確認する。
- 内定取消・退職等が生じた場合は、申請を安易に取り下げず専門家に相談する。
在留審査の処理期間は在留資格や申請種別によって異なり、近年は長期化する傾向も見られます。
特例期間はあくまで暫定的な救済であり、恒久的に在留を保証するものではありません。採用計画そのものを、審査期間に余裕をもたせて組み立てておくことが根本的な対策になります。
在留審査処理期間の最新動向
よくある質問(FAQ)
- Q特例期間中でも外国人社員をそのまま働かせて問題ありませんか?
- A
従前の在留資格の範囲内であれば、特例期間中も就労を継続できると解されます。ただし、まだ許可が出ていない新しい在留資格の活動を先取りすることはできません。就労可否の根拠は入管法第20条第6項・第21条第4項です。判断に迷う場合は個別に確認してください
- Q在留期限を過ぎてから申請した場合も特例期間は使えますか?
- A
使えません。特例期間は在留期間の満了の日までに更新・変更申請を行っていることが前提です。期限を過ぎてからの申請では特例期間は発生せず、オーバーステイとなるおそれがあります。
- Q特例期間は必ず2か月間ありますか?
- A
いいえ。特例期間は「処分がされる時」か「満了日から2か月経過時」のいずれか早い時までです。審査結果が2か月より前に出れば、その時点で特例期間は終了します(不許可の場合も同様です)。
- Q特例期間中に海外出張へ行っても大丈夫ですか?
- A
再入国許可等による出国は可能とされますが、必ず特例期間内に帰国する必要があります。みなし再入国の可否は解釈が分かれるため、事前に申請先の地方出入国在留管理官署へ確認することをおすすめします。
- Q特例期間中であることを企業はどう確認すればよいですか?
- A
窓口申請の場合、在留カード裏面の「在留期間更新等許可申請欄」に申請中の旨が記載されます。オンライン申請では裏面に記載されないため、申請受付の記録で確認・保管してください。
まとめ
特例期間は、在留期限までに更新・変更申請をしておけば、審査結果が出るまで、または満了から2か月を経過するまでのいずれか早い時まで、従前の在留資格で在留・就労を続けられる救済的な制度です。
ポイントは「期限内申請が前提であること」「2か月は上限であり結果が出れば終了すること」「在留カード裏面で申請中を確認すること」「海外渡航や取り下げには特に注意が必要なこと」の4点です。
具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。

