外国人社員を採用したあと、多くの企業が意外と見落としがちなのが「在留資格の更新手続き」です。
「ビザはいつか本人が手続きするでしょう」と思っていたら、気づけば期限が2週間後——そんなご相談が、実際に私のもとにも届きます。
技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)の在留資格は、付与される期間が1年・3年・5年のいずれかで、期限が来たら必ず更新申請が必要です。更新をしなければ、外国人社員はその日から就労できなくなります。
この記事では、企業の人事担当者が「何を・いつ・どのように」準備すべきかを、実務経験と令和8年(2026年)4月の最新改正を踏まえて網羅的に解説します。
技術・人文知識・国際業務の在留資格について詳しくはこちら(技人国完全ガイド)
【筆者プロフィール詳細】
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
技人国の更新申請とは
在留資格の更新は、正式には「在留期間更新許可申請」といいます。
現在の在留資格を変えるのではなく、引き続き同じ「技術・人文知識・国際業務」の資格で日本に在留することを認めてもらう手続きです。
重要なのは、更新は審査があるという点です。取得時と同様に、入管(出入国在留管理庁)が改めて要件を審査します。「前回許可されたから今回も大丈夫」とは限りません。審査では、取得時と同じく「該当性・基準適合性・相当性」の3つの観点が確認されます。
付与される在留期間は、1年・3年・5年のいずれかです。企業の規模・業績、申請人の在留状況などを総合して判断されるため、前回5年でも今回1年になることもあります。
在留資格許可の「該当性・基準適合性・相当性」とは?(該当性・基準適合性・相当性)
いつ申請する?更新時期と「特例期間」の仕組み
更新申請は、在留期間満了日の3か月前から申請できます。たとえば満了日が2025年10月31日の場合、2025年8月1日から申請可能です。
✅ 在留期間満了日が 2025年10月31日 の場合 → 2025年8月1日から申請可能
申請は早めが鉄則です。審査には通常2週間〜1か月程度かかりますが、審査が混み合う時期は2か月近くかかるケースもあります。技人国の平均処理期間も長期化傾向にあるため、採用・配置の計画には十分な余裕を持たせてください。
技人国の最新の審査日数を見る
在留期間更新許可申請書のダウンロードはこちら出入国在留管理庁「在留期間の更新」申請書ダウンロードページ
「うっかり期限切れ」を防ぐ社内管理の仕組み
在留期間の管理は、人事担当者が把握しておくべき義務的な業務です。
外国人社員が複数いる場合は、Excelなどで一覧管理し、期限の4か月前にアラートが入る仕組み(申請開始の3か月前より、さらに1か月の余裕を持たせる)を作っておくことをおすすめします。
特例期間とは?更新中に期限が切れても働ける?
申請中に在留期間の満了日を迎えた場合、特例期間として引き続き在留・就労が認められます。
| 項目 | 内容 |
| 特例期間 | 在留期間満了日から2か月間、または許可・不許可の結果が出るまでのいずれか短い方 |
| 就労の可否 | 特例期間中も通常どおり就労できます |
ただし、申請をしていないと特例期間は発生しません。「期限が来てから慌てて申請」では手遅れになるため、早期の申請が不可欠です。
なお、申請中に内定取消などが起きた場合の「取り下げ」は、かえって不法残留につながる危険があります。取り下げの前に、正しい対応手順を確認してください。
特例期間中の取り下げリスクを確認する

必要書類一覧(在留期間更新許可申請用)
書類は大きく「申請人(外国人社員)が準備するもの」と「企業が準備するもの(カテゴリー別)」に分かれます。まずは自社がどのカテゴリーに当たるかを確認しましょう。
カテゴリー制度|企業規模で書類が変わる
入管は申請企業を4つのカテゴリーに区分しており、カテゴリーが高い(1・2)ほど提出書類が少なくなります。
| カテゴリー | 対象企業 | 書類の量 |
| カテゴリー1 | 上場企業・国や地方公共団体 など | 最少 |
| カテゴリー2 | 前年分の源泉徴収税額が1,000万円以上 | 少なめ |
| カテゴリー3 | 前年分の源泉徴収税額が1,000万円未満 | 標準 |
| カテゴリー4 | 新設法人・決算未了 など | 多め |
多くの中小企業はカテゴリー3に該当します。初めて手続きする場合は、どのカテゴリーに当たるかを事前に確認しておきましょう。
■ 全カテゴリー共通(申請人本人)
| No. | 書類 | 備考 |
| 1 | 在留期間更新許可申請書 | 写真貼付(申請前6か月以内・縦4cm×横3cm) |
| 2 | 写真(縦4cm×横3cm) | 無帽・無背景・鮮明なもの。裏面に氏名記載 |
| 3 | パスポート及び在留カード | 提示のみ(原本) |
■ カテゴリー1・2(追加書類)
| No. | 書類 | 備考 |
| 6 | 住民税の課税(または非課税)証明書及び納税証明書 | 1年間の総所得・納税状況が記載されたもの。市区町村発行 |
■ カテゴリー3・4(共通書類)
| No. | 書類 | 備考 |
| 7 | 活動内容等を明らかにする資料 | 労基法第15条に基づき労働者に交付される労働条件通知書等 |
| 8 | 登記事項証明書 | — |
| 9 | 事業内容を明らかにする資料 | 会社案内等(主要取引先・取引実績含む) |
| 10 | 直近年度の決算文書の写し | 新規事業の場合は事業計画書 |
■ カテゴリー4のみ(追加書類)
| No. | 書類 | 備考 |
| 11 | 源泉徴収票等法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする資料 | 給与支払事務所開設届書、直近3か月分の所得税徴収高計算書等 |
⚠️ 転職後の初回更新の場合 カテゴリー3・4の企業に転職後はじめて更新する場合は、上記書類に加えて追加資料が必要になります(カテゴリー3は一部省略可)。詳細は申請前に入管または行政書士にご確認ください。最新の提出書類は、出入国在留管理庁が公表する「提出書類チェックシート」で確認するのが確実です。
【2026年改正】令和8年4月15日の追加書類と派遣形態の取扱い
近年の技人国の審査は、形式的な書類確認から、企業の実態や本人の業務遂行能力にまで踏み込む方向へ変化しています。2026年(令和8年)には、更新実務に直結する2つの運用変更がありました。
令和8年4月15日以降の追加書類(カテゴリー3・4)
令和8年4月15日(水)以降の申請から、カテゴリー3又は4に該当する企業では、次の書類の追加提出が求められるようになりました。
- 所属機関の代表者に関する申告書(参考様式)
- (主に言語能力を用いて対人業務等に従事する場合)業務上使用する言語について、CEFR・B2相当の言語能力を有することを証する資料
日本語については、次のいずれかに該当すればCEFR・B2相当の能力を有するものとみなされます。
- JLPT(日本語能力試験)N2以上を取得している
- BJTビジネス日本語能力テストで400点以上を取得している
- 中長期在留者として20年以上本邦に在留している
- 本邦の大学を卒業、または本邦の高等専門学校・専修学校の専門課程・専攻科を修了している
- 日本の義務教育を修了し、高等学校を卒業している
更新申請で特に押さえたいポイント
・以前から継続して同様の業務内容に従事している場合は、上記書類の提出を要しません(ただし審査の中で提出を求められることがあります)。
・一方、業務内容の変更や転職等により、言語能力を用いた対人業務に主に従事することとなった場合は、更新申請時に提出が必要になります。
つまり、通訳・翻訳やホテルフロント等の接客のように「言語を使う対人業務」に新たに就いたケースでは、更新でも言語能力の証明が論点になり得ます。職務内容説明書で「対人業務の比重」「日本語を使う場面」を明確に記載しておくと、審査対応がスムーズです。
出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」
派遣形態で就労する場合の追加書類(令和8年3月9日〜)
令和8年3月9日申請分から、派遣契約で就労する外国人の申請書類が変更されました。出入国在留管理庁は令和8年2月に「申請人が派遣形態で就労する場合の取扱いについて」を公表しています。全カテゴリー共通で、以下が追加で必要になります。
| 書類 | 備考 |
| 申請人の派遣労働に関する誓約書(派遣元用) | 参考様式あり |
| 申請人の派遣労働に関する誓約書(派遣先用) | 参考様式あり |
| 労働条件通知書(雇用契約書)の写し | — |
| 労働者派遣個別契約書の写し | — |
| 派遣元管理台帳 | 更新申請から追加 |
| 派遣先管理台帳 | 更新申請から追加 |
| 就業状況報告書 | 更新申請から追加 |
🔴 重要:申請時点で派遣先が未確定の場合は、在留期間更新許可を受けることができません。必ず派遣先を確定させた上で申請してください。また、在留審査の際には派遣先に対しても業務内容・活動状況の確認が直接行われる場合があります。
出入国在留管理庁「派遣形態で就労する場合の取扱いについて」令和8年2月 出入国在留管理庁
更新審査で入管が見ているポイント
更新審査の基本軸は、取得時と同様に「該当性・基準適合性・相当性」の3点です。更新ならではの確認事項も加わります。
業務内容の継続性(該当性)
「技人国で許可された業務を、実際に行っているか」が最初の確認ポイントです。営業・貿易・通訳系の職種では、次のような点が見られます。
- 営業職: 単純な肉体労働や製造補助になっていないか
- 貿易職: 書類作成・交渉・調整など「人文知識」の業務が主であるか
- 通訳・翻訳: 語学能力を活かした業務か、単なる接客補助になっていないか
更新時に職務内容が変わっていた場合は、必ず職務内容説明書を添付して変更の経緯と業務の専門性を説明することが重要です。
技人国で認められる業務内容の詳細はこちら(技人国完全ガイド)
給与の水準(基準適合性)
給与が日本人と同等以上であることが求められます。年収が著しく低い場合(目安として250万円未満)は審査が厳しくなることがあります。昇給・降給があった場合は、その理由が合理的であることを説明できるよう準備しておきましょう。
引き続き在留することの相当性
「相当性」とは、「在留期間の更新許可申請を行う際に、引き続き日本に在留することが適当であると認められる相当な理由があること」を指します。更新審査では、以下の4つの観点から総合的に判断されます。
【安定性】
申請者やその活動が、日本の社会や公共の利益に対して脅威とならないかという観点から判断されます。
企業側の実務ポイントとして、法令違反・不法就労・社会保険未加入などがあると、この安定性の観点で懸念を持たれます。コンプライアンス管理は更新審査と直結しています。
【継続性】
申請者が日本で現在の活動を安定して継続できるか、また今後もその活動を継続していく意思と能力があるかという観点から判断されます。
営業・貿易・通訳系の職種では、雇用契約の継続性・業務の安定した継続実績が評価されます。短期間での部署異動や職務内容の大幅な変更があった場合は、その経緯を書面で説明することが重要です。
【必要性】
申請者が引き続き日本に在留すること、または特定の在留資格を維持することについて、客観的に見て妥当な理由や合理性があるかという観点から判断されます。
「この外国人社員でなければならない理由」「会社にとって必要な人材であること」を雇用継続の理由として示せると、審査において説得力が増します。
【信憑性】
申請内容や提出された資料、申請者の主張が、どれだけ信頼でき、真実性があるかという観点から判断されます。
書類間の矛盾(在職証明書と給与明細の業務内容のズレ、雇用契約書と実態の乖離など)は信憑性を著しく損ないます。提出書類の内容が一貫していることが大前提です。
法令遵守の状況
在留資格審査における「相当性」の基本的な考え方はこちら該当性・基準適合性・相当性)
社会保険の未加入・税金の未納などが判明すると、更新に影響します。社会保険の適正加入と税務管理は更新審査に直結します。
注意すべきは「未納」だけではありません。期日通りに納付・支払いが行われていない場合も、審査上の消極的な判断材料となります。社会保険料・税金ともに、納付額だけでなく納付時期の適正さも確認されているという意識を持って管理することが重要です。
また、法令遵守は税務・社会保険にとどまりません。交通違反や罰金・執行猶予付き判決なども、相当性の「安定性」の観点から更新審査上のマイナス要素となります。申請人本人に前歴がある場合は、その内容・経緯・その後の状況を申請書や上申書で正直に説明することが、かえって信憑性の確保につながります。隠蔽や事実と異なる記載は、発覚した際に不許可・取消しのリスクを大幅に高めます。
なお、実刑で1年を超える懲役・禁錮に処せられた場合は、入管法第24条第4号リにより退去強制事由に該当します(執行猶予付き判決は除く)。この場合は更新申請以前に在留資格そのものを失う可能性があるため、採用・雇用継続の判断において企業側も注意が必要です。
出入国管理及び難民認定法 第24条(e-Gov法令検索)e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
営業・貿易・通訳系に多い「更新NG」パターン
❌ パターン①:業務内容が実態と乖離している
採用当初は「海外営業」だったが、実態は国内ルート営業のみ・語学を使う機会がほぼないというケース。技人国の「国際業務」要件から外れてしまう可能性があります。
❌ パターン②:職位が下がっているのに説明がない
昇進どころか降格・部署異動があったのに、説明資料がない。入管には「何かあったのでは」と疑念を持たれます。
❌ パターン③:会社の規模感と給与が合っていない
従業員数十名の会社で、外国人社員の給与だけ飛び抜けて高い、あるいは低い。バランスが悪いと審査官が気にします。
❌ パターン④:在職証明書と実際の業務がズレている
在職証明書に書いた業務と、源泉徴収票や雇用保険の記録が整合していない。書類の矛盾は即、追加資料の求めにつながります。
書類を整えて逆転許可を取得した実例はこちら(技人国逆転許可事例)
更新申請の流れ(ステップ別)
| STEP | 内容 | 目安時期 |
| STEP 1 | 在留期間の確認 | 満了日の4か月前 |
| STEP 2 | 書類の準備(申請人・企業それぞれ) | 満了日の3〜4か月前 |
| STEP 3 | 申請書の作成・チェック | 満了日の3か月前 |
| STEP 4 | 申請(入管窓口 または 行政書士による取次) | 満了日の3か月前 |
| STEP 5 | 審査(2週間〜1か月程度) | — |
| STEP 6 | ハガキ受領 | 審査完了後 |
| STEP 7 | 入管に出頭して新しい在留カードを受領 | ハガキ受領後 |
オンライン申請システムを利用すれば、入管窓口への出頭を省略できる場合もあります。運用は変更されることがあるため、最新の案内をご確認ください。
誰が申請するのか|申請取次行政書士とは
更新申請は原則として本人申請ですが、以下の者が代理・取次申請できます。
| 申請者 | 備考 |
| 本人(外国人社員) | 在留カードを持参して出頭 |
| 申請取次資格を持つ行政書士 | 本人の出頭が不要 |
| 弁護士 | 同上 |
| 雇用機関の職員(地位証明要) | 研修が必要な場合あり |
申請取次行政書士に依頼すると、外国人社員本人が入管に出頭する必要がなくなります。就業中の外国人社員にとっても、企業にとっても業務への影響を最小限に抑えられます。
許可後にやるべきこと
- 在留カードの更新:新しい在留カードを必ず受け取ってください
- 次回更新時期の記録:社内管理表に新しい期限を登録する
- 住所変更がある場合:在留カードの住所変更届出(市区町村)
よくある質問
- Q更新申請中に転職(転籍)した場合はどうなりますか?
- A
申請中に所属機関が変わると、申請内容と実態が異なるため、取り下げ・再申請が必要になります。転職のタイミングには注意が必要です。
- Q更新申請を本人ではなく会社が出せますか?
- A
人事担当者が「職員」として申請する方法もありますが、申請取次の資格は必要ありません。ただし実務的には行政書士に依頼するケースがほとんどです。
- Q許可期間は必ず同じ年数になりますか?
- A
なりません。前回5年でも今回1年になることがあります。企業の規模・業績・申請人の在日期間などを総合して判断されます。
- Q令和8年4月の改正で、更新でも代表者申告書や言語能力の資料は必ず必要ですか?
- A
対象はカテゴリー3・4の企業で、言語能力の資料は「主に言語能力を用いて対人業務に従事する場合」に必要となります。更新では、以前から継続して同じ業務内容に従事している場合は提出を要しないとされていますが、業務内容の変更や転職で対人業務に就いた場合は必要になり得ます(2026年7月時点。最終的には個別の審査によります)。
- Q派遣社員として雇用している外国人の更新は誰が申請しますか?
- A
派遣元(所属機関)が手続きの主体となります。ただし令和8年3月9日以降は派遣先を確定させた上で、派遣元・派遣先の双方が誓約書を提出する必要があります。
まとめ|更新こそ「継続して外国人社員が活躍できる土台」
技人国の更新申請は、書類の数は多いですが、適切に準備すれば着実に許可を得られる手続きです。
ポイントは、①満了日の3〜4か月前から動く、②特例期間に頼らず早めに申請する、③業務内容・給与・法令遵守の一貫性を書類で示す、の3点です。
加えて令和8年4月15日以降はカテゴリー3・4で代表者申告書等が、派遣形態では誓約書等が追加されるなど、直近の運用変更にも注意が必要です。
「うちは標準的なケースだと思うけれど、念のため確認したい」というご相談も大歓迎です。具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。
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