「ワーキングホリデーで来日した外国人を、期間終了後も正社員として雇い続けたい」——そう考える人事担当者は少なくありません。
ワーキングホリデー(在留資格「特定活動」)はあくまで休暇を主目的とした一時的な制度のため、そのまま就労を続けることはできず、就労系の在留資格へ「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
しかし、変更できる在留資格は本人の学歴・職歴や職務内容によって異なり、さらに国籍によっては日本国内で変更できず、いったん帰国が必要になるケースもあります。
本記事では、ワーキングホリデーから就労ビザへ変更するための条件、変更できる主な在留資格、手続きの流れと必要書類、審査で見られるポイントを、2026年8月時点の一次情報をもとに人事担当者向けに整理します。
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
ワーキングホリデー(特定活動)とはどんな在留資格か
ワーキングホリデー制度とは、二国・地域間の取決めに基づき、相手国・地域の青少年に対し、休暇を主な目的とした入国・滞在と、その滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度です。
外務省によれば、日本は1980年にオーストラリアとの間で制度を開始し、2026年(令和8年)4月1日現在、32か国・地域との間で導入しています。在留資格としては「特定活動」(告示第5号)に分類され、通常は最長1年程度の在留が認められます。
ここで重要なのは、ワーキングホリデーの就労はあくまで「休暇中の滞在資金を補うための付随的なもの」と位置づけられている点です。したがって、フルタイムの継続雇用を前提に採用する場合や、在留期間の満了後も引き続き働いてもらう場合には、就労を主目的とした在留資格へ変更する必要があります。なお、風俗営業等への従事は認められておらず、退去強制事由に該当し得る点にも注意が必要です。
在留資格「特定活動」の全体像はこちら
ワーホリから変更できる主な就労系在留資格
ワーキングホリデーから変更する在留資格は、本人の学歴・職歴と、実際に従事する職務内容によって決まります。
就労系在留資格には共通して「該当性・基準適合性・相当性」の観点があり、職務内容と在留資格が対応しているかが審査されます。代表的な選択肢は次のとおりです。
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「該当性・基準適合性・相当性」とは
| 在留資格 | 主な対象・要件の概要 | 向いているケース |
| 技術・人文知識・国際業務 (技人国) | 大学卒業等の学歴または一定の実務経験があり、専攻・経歴と関連する専門的・技術的業務に従事すること | エンジニア、通訳・翻訳、海外取引、企画・営業など |
| 特定技能1号 | 対象分野の技能試験・日本語試験に合格し、受入基準を満たすこと。分野別協議会への加入等が必要 | 外食・介護・建設・宿泊など人手不足分野の現場業務 |
| 特定活動46号 | 日本の4年制大学等を卒業し、日本語能力(N1相当等)を満たすこと | 日本の大学卒業者を幅広い業種で受け入れる場合 |
| 高度専門職1号 | ポイント制で70点以上を満たす高度人材 | 高い学歴・年収・実績を持つ専門人材 |
いずれの在留資格も、単に採用が決まっただけでは足りず、それぞれの要件を満たしていることが前提です。特に技人国は「専攻・経歴と職務内容の関連性」が審査の中心となります。
技人国の要件をくわしく見る
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在留資格変更が認められない国|審査要領による取扱い(5か国のみ国内変更可)
見落とされやすいのが、国籍によっては日本国内でワーキングホリデーから就労ビザへ直接変更できず、いったん帰国したうえで、あらためて就労ビザ(在留資格認定証明書)を取得し直す必要があるという点です。
これは、ワーキングホリデーが二国・地域間の取決め(協定・口上書等)に基づく制度であり、多くの取決めで「滞在期間中に在留資格を変更しないこと」が条件とされているためです。
出入国在留管理庁の審査要領「ワーキングホリデー対象国・地域別取扱い等一覧表」では、対象国・地域ごとに在留資格変更の可否が示されています。同要領上、在留資格の変更が「認めない」とされていない(=日本国内での就労系在留資格への変更が可能と解される)のは、オーストラリア・ニュージーランド・カナダ・韓国・ドイツの5か国です。
一方、そのほかの国・地域は「在留資格の変更は認めない」と明記されており、就労を継続するには、原則としていったん出国したうえで、日本の受入企業が代理人となって地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書(COE)交付申請を行い、交付後に本人が在外公館で査証申請を行う流れとなります(COE交付申請は日本の入管に対して行うもので、在外公館は査証の段階で関与します)。
| 区分(審査要領による) | 国・地域 |
| 日本国内での在留資格変更が可能と解される(5か国) | オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、ドイツ |
| 在留資格の変更は認めない=原則いったん帰国(26か国・地域) | フランス、英国、アイルランド、デンマーク、台湾、香港、ノルウェー、ポルトガル、ポーランド、スロバキア、オーストリア、ハンガリー、スペイン、アルゼンチン、チリ、アイスランド、チェコ、リトアニア、スウェーデン、エストニア、オランダ、ウルグアイ、フィンランド、ラトビア、ルクセンブルク、マルタ |
特に注意したいのが英国です。英国は在留期間の「更新」(ワーキングホリデーとしての滞在延長。最長2年)は認められていますが、「在留資格の変更」は認められていません。 オーストラリア・カナダにも更新の取扱いがありますが、更新(ワーホリの延長)と変更(就労ビザへの切替え)は別問題であり、変更の可否は上表が基準となります。
なお、2026年から新たに対象となったイタリアは今回の審査要領抜粋に記載がなく、取扱いは個別の確認が必要です。審査要領は改正され得るため、最新の取扱いは管轄の地方出入国在留管理局にご確認ください。
在留資格変更の手続きの流れと必要書類
ワーキングホリデーから就労ビザへの変更は、出入国管理及び難民認定法第20条に基づく「在留資格変更許可申請」として、住居地を管轄する地方出入国在留管理局に対して行います。おおまかな流れは次のとおりです。
- 採用内定・雇用条件の確定(職務内容が変更先の在留資格に対応しているか確認)
- 本人の学歴・職歴と職務内容の適合性をチェック
- 必要書類の準備(本人書類+受入企業書類)
- 在留資格変更許可申請書の提出(オンライン申請または窓口)
- 審査・追加資料の求めへの対応
- 許可後、新しい在留カードの受領
必要書類は変更先の在留資格によって異なりますが、一般的には次のようなものが求められます。
| 区分 | 主な書類の例 |
| 本人に関する書類 | 在留資格変更許可申請書、写真、パスポート・在留カードの提示、卒業証明書・学位記、(必要に応じ)職歴を証する書類 など |
| 受入企業に関する書類 | 雇用契約書または労働条件通知書、会社の登記事項証明書、直近年度の決算文書、会社案内、雇用理由書(職務内容の説明)など |
実際に必要となる書類は、企業のカテゴリー(規模・上場区分等)や在留資格によって省略・追加があります。最新の提出書類は出入国在留管理庁の在留資格別の一覧でご確認ください。
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申請のタイミングと審査で見られるポイント
在留資格変更許可申請は、原則として在留期間の満了日までに行う必要があります。ワーキングホリデーの在留期間は限られているため、雇用の方針が固まった段階で早めに準備を始めることが重要です。審査には一定の期間を要し、時期や在留資格によって処理期間は変動します。採用スケジュールを組む際は、余裕を持った申請を心がけてください。
在留審査の日数を確認する
なお、在留期間満了日までに申請を行っていれば、審査結果が出るまでの間または満了から2か月を経過する日までは、従前の在留資格のまま在留できる「特例期間」が設けられています。ただし特例期間の就労可否や範囲には注意が必要で、安易に頼ることは避けるべきです。
特例期間の仕組みを確認
審査では、①職務内容が変更先の在留資格に該当するか、②本人が学歴・職歴等の基準を満たすか、③会社の事業の安定性・継続性や雇用の必要性といった相当性、が総合的に見られます。ワーキングホリデーは「休暇目的」で入国している点から、就労目的への変更では、職務内容と本人の経歴の関連性、企業側の雇用理由を丁寧に説明することが実務上のポイントとなります。
企業が押さえておきたい実務上のリスク
第一に、変更許可が下りるまでは就労系の業務に本格的に従事させられない場合がある点です。ワーキングホリデー期間中の就労はあくまで付随的なものであり、フルタイムの基幹業務を前提とするのであれば、変更許可を待つのが安全です。
第二に、国籍による帰国要否の確認を怠ると、採用計画が大きく狂うおそれがあります。内定を出す前に、本人の国籍で日本国内変更が可能かを確認しておくことが望まれます。
第三に、在留期限の管理です。ワーキングホリデーは在留期間が短く、申請準備が遅れると満了に間に合わないことがあります。不法就労助長罪のリスクを避けるためにも、在留カードの有効期限と申請状況を企業側でも管理してください。判断に迷う場合は、申請取次に対応する行政書士など専門家への相談が有効です。
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よくある質問(FAQ)
- Qワーキングホリデーから就労ビザへは必ず変更できますか?
- A
必ず変更できるとは限りません。変更先の在留資格ごとに学歴・職歴・職務内容などの要件があり、これらを満たさない場合は許可されないことがあります。特に技術・人文知識・国際業務では、本人の専攻・経歴と職務内容の関連性が重視されると解されます。
- Q国籍によっては日本にいながら変更できないと聞きましたが本当ですか?
- A
出入国在留管理庁の審査要領では、日本国内での在留資格変更が「認めない」とされていないのはオーストラリア・ニュージーランド・カナダ・韓国・ドイツの5か国で、それ以外の国・地域は「在留資格の変更は認めない」とされています。該当する場合は、いったん帰国し在留資格認定証明書交付申請を行うのが原則です。英国は更新(滞在延長)は可能でも変更は不可である点に注意してください。取扱いは改正され得るため、本人の国籍について管轄の地方出入国在留管理局にご確認ください。
- Q申請はいつまでに行えばよいですか?
- A
原則として在留期間の満了日までに在留資格変更許可申請を行う必要があります。ワーキングホリデーは在留期間が短いため、雇用方針が固まり次第、早めの準備をおすすめします。審査期間は時期・在留資格により変動します。
- Q審査中もこれまでどおり働いてもらえますか?
- A
在留期間満了日までに申請していれば、結果が出るまで又は満了から2か月までは従前の在留資格で在留できる特例期間の制度があります。ただし就労の可否・範囲には注意が必要で、フルタイムの基幹業務は変更許可後に開始するのが安全です。
- Q手続きは自社だけで対応できますか?
- A
制度上は本人・企業で申請可能です。ただし在留資格ごとに要件・書類が異なり、職務内容の説明や書類構成に専門的な判断が必要な場面もあります。判断に迷う場合は、申請取次に対応する行政書士等への相談が有効です。
まとめ
ワーキングホリデー(特定活動)は休暇を主目的とした一時的な制度のため、期間終了後も外国人を継続雇用するには就労系の在留資格への在留資格変更許可申請が必要です。
変更先は本人の学歴・職歴と職務内容によって異なり、技人国・特定技能・特定活動46号などが主な選択肢となります。
加えて、審査要領上、日本国内での変更が可能と解されるのはオーストラリア・ニュージーランド・カナダ・韓国・ドイツの5か国のみで、そのほかの国籍はいったん帰国が必要になる点に注意が必要です。就労系への変更は職務内容と経歴の関連性、雇用の必要性の説明が要となります。
具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。

