「空港の地上業務で人が足りない。特定技能で外国人を採用できると聞いたが、何から確認すればよいのか」
航空分野の特定技能は、受け入れられる会社そのものが空港管理者の承認や航空法上の認定で絞られているため、一般的な特定技能の知識だけでは判断を誤りやすい分野です。
さらに2026年(令和8年)1月の閣議決定と同年7月の運用要領改正で、旅客ハンドリングや機内食の搭降載、航空燃料の取扱いまで業務範囲が広がり、2号には日本語要件が示されるなど、制度が大きく動いています。
この記事では、航空分野の人事担当者・経営者の方に向けて、2つの業務区分で従事できる業務、1号・2号の試験と日本語・実務経験の要件、受入企業が満たすべき基準と協議会加入の手順までを、申請取次行政書士が2026年10月時点の一次情報をもとに整理します。
行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級
長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、
行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。 また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。
特定技能「航空」とは|2026年10月時点の制度概要と受入れ状況
特定技能「航空分野」は、2019年(平成31年)4月の特定技能制度創設時から設けられている分野で、所管は国土交通省(航空局)です。
空港で航空機の誘導や手荷物・貨物の搭降載を担う空港グランドハンドリングと、航空機の機体・装備品を整備する航空機整備の2つの業務区分があり、2023年(令和5年)からは熟練した技能を持つ人材向けの特定技能2号も対象となっています。
この分野は、2026年に制度の土台が大きく改められました。
2026年(令和8年)1月23日に新しい「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(以下、分野別運用方針)が閣議決定され、これを受けて同年7月17日に「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-航空分野の基準について-」(以下、運用要領)が一部改正されています。インターネット上の解説記事には改正前の内容のものも残っていますので、参照する資料の日付に注意してください。
受入れの規模を見ると、出入国在留管理庁が公表した「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年7月末時点・速報値)」では、航空分野の受入れ見込数は4,900人(令和11年3月までの数字)、在留者数は2,823人、充足率は57.6%で、1年間で968人増加しています。
工業製品製造業(見込数199,500人)などと比べると規模の小さい分野ですが、在留者数は着実に増えています。
出入国在留管理庁の公表資料(受入れ見込数・在留者数)
もっとも、航空分野は「人手が足りていれば、どの会社でも受け入れられる」分野ではありません。
①受入企業が空港管理者の承認や航空法上の認定を受けた者(またはその委託先)であること、
②外国人本人が業務区分ごとの試験等に合格していること、
③国土交通省が設置する協議会に加入していること
この3つがそろって初めて受入れが可能になります。特定技能制度そのものの基本を確認したい方は、あわせてご覧ください。
特定技能制度の全体像と受入れの基本
2つの業務区分と従事できる業務|2026年改正で広がった範囲
航空分野で特定技能外国人が従事できる業務は、運用要領の別表で業務区分ごとに定められています。外国人は、試験等の合格によって確認された技能を要する業務に主として従事しなければなりません。
空港グランドハンドリング区分
1号は「社内資格等を有する指導者やチームリーダーの指導・監督の下で行う」業務として、2026年改正後は次の7つが列挙されています。
| # | 業務 | 改正前(令和6年2月版)との比較 |
| 1 | 航空機地上走行支援業務 | 従来から対象 |
| 2 | 手荷物・貨物取扱業務 | 従来から対象 |
| 3 | 手荷物・貨物の航空機搭降載業務 | 従来から対象 |
| 4 | 航空機内外の清掃整備業務 | 従来から対象 |
| 5 | 旅客ハンドリング業務 | 新たに明記 |
| 6 | 機内食等の運搬・搭降載業務 | 新たに明記 |
| 7 | 航空燃料取扱業務 | 新たに明記 |
旅客ハンドリング(搭乗手続きなど)、機内食の搭降載、航空燃料の取扱いが業務区分に明記されたことで、これまで特定技能の対象かどうか判断に迷っていた現場でも受入れを検討しやすくなったといえます。
2号は、同じ7業務に「社内資格等を有する指導者やチームリーダーとして」従事し、これらの工程を管理する業務とされています。
なお、改正前の業務区分の試験に合格していた人は、改正後の業務区分の試験に合格したものとみなす経過措置が設けられています。すでに試験に合格している候補者が、改正によって受け直しを求められることはありません。
航空機整備区分
1号は、整備の基本技術を有し、国家資格整備士等の指導・監督の下、運航整備・機体整備・装備品・原動機整備等において行う航空機の機体および装備品または部品等の整備業務全般です。
2号は、現場で専門的な知識・技量を要する整備業務に従事し、自らの判断により行う専門的・技術的な航空機整備業務とされています。
1号と2号の違いは、グランドハンドリングでは「指導を受ける側」から「指導・工程管理をする側」へ、航空機整備では「指導・監督の下での作業」から「自らの判断による作業」へ、という役割の変化として整理すると理解しやすいでしょう。
関連業務の考え方と成田の国家戦略特区
いずれの区分でも、その業務に従事する日本人が通常行う関連業務(事務作業、作業場所の整理整頓や清掃、積雪時の除雪など)に付随的に従事することは差し支えありません。ただし、専ら関連業務だけに従事させることは認められません。
また、国家戦略特別区域の「航空物流外国人材活用事業」として、成田空港の空港敷地外にある保税蔵置場・総合保税地域で行う貨物取扱業務も、空港グランドハンドリング(貨物取扱業務に限る)として認められています。
この場合は後述の受入企業要件の一部が適用されない代わりに、千葉県と成田国際空港株式会社が設置する協議会への所属が必要です。
業務の遂行にあたっては、航空法等の関係法令や安全管理規程、運航・整備規程、社内規定などを遵守することが前提となります。
特定技能1号・2号の要件|評価試験・日本語能力・実務経験
1号特定技能外国人の技能水準・日本語能力水準
1号では、技能試験と日本語試験の両方に合格することが原則です。
- 技能試験:「航空分野特定技能1号評価試験」(空港グランドハンドリング/航空機整備)。試験は公益社団法人日本航空技術協会が実施しています。【外部リンク候補:公益社団法人日本航空技術協会 特定技能評価試験】
- 日本語試験:「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上。具体的には、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2.2相当以上または日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格が求められます。
グランドハンドリングの1号試験は、指導者の監督の下で航空機の誘導・けん引の補佐や、荷崩れを起こさない貨物の積付けなどができるレベルを、航空機整備の1号試験は、簡単な点検や交換作業などの基礎的な整備業務ができるレベルを確認するものとされています。
航空分野特定技能評価試験の日程・会場
2号特定技能外国人の技能水準・実務経験・日本語能力水準
2号では、試験等に加えて実務経験が要件となります。
| 業務区分 | 技能水準 | 実務経験 |
| 空港グランドハンドリング | 航空分野特定技能2号評価試験(空港グランドハンドリング) | 現場で技能者を指導しながら作業に従事した経験(新入社員等への指導経験) |
| 航空機整備 | 航空分野特定技能2号評価試験(航空機整備)または航空従事者技能証明(一等・二等航空整備士、一等・二等航空運航整備士、航空工場整備士の各区分) | 専門的な知識・技量を要する作業を実施した3年以上の経験 |
グランドハンドリングの実務経験は2号試験の受験時に確認され、航空従事者技能証明のルートで申請する場合は「航空分野2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る証明書」(分野参考様式第9-3号)で確認されます。
日本語については、改正後の運用要領で2号にも「日本語教育の参照枠」B1相当以上(日本語能力試験N3以上で、CEFRのB1相当以上と判定された場合に限る)が示されました。
ただし、2027年(令和9年)4月1日以降の取扱いについては「別途お知らせします」とされているため、2号への移行を予定している方は、申請時点の最新の案内を必ず確認してください。
技能実習2号修了者の試験免除
「空港グランドハンドリング職種(航空機地上支援作業・航空貨物取扱作業・客室清掃作業)」の技能実習2号を良好に修了した人は、グランドハンドリング区分の1号で技能試験・日本語試験の両方が免除されます。この取扱いは、育成就労制度が始まる2027年(令和9年)4月1日以降も「当面の間」続くとされています。
それ以外の職種で技能実習2号を良好に修了した人は、技能試験の合格は必要ですが、日本語試験は免除されます。
なお、航空機整備区分に対応する技能実習の職種はないため、航空機整備で1号を目指す場合は技能試験の受験が必要です。
受入企業の要件|空港管理者の承認・航空法の認定と協議会加入
航空分野で最も特徴的なのが、受入企業(特定技能所属機関)に課される分野固有の基準です。平成31年国土交通省告示第360号第2条は、次のすべてを満たすことを求めています。
①業務区分ごとの事業者要件
- 空港グランドハンドリング区分:空港管理規則第12条第1項・第12条の2第1項・第13条第1項の承認を受けた者(航空法第100条第1項の許可を受けた者を含む)や、これらに準じた条例・規程に基づいて空港管理者から営業を認められた者で、空港グランドハンドリングを営む者
- 航空機整備区分:航空法第20条第1項第3号・第4号・第7号の能力について国土交通大臣の認定を受けた者(いわゆる認定事業場)、またはその者から業務の委託を受けた者
航空機整備区分では、認定事業場から業務委託を受けている会社も対象になり得る点がポイントです。一方、グランドハンドリング区分は空港管理者から営業を認められていることが前提となるため、自社がどの承認に基づいて空港内で営業しているかを事前に整理しておく必要があります。
整備系の分野で求められる認証工場・協議会の要件
②協議会への加入と協力
国土交通省が設置する航空分野特定技能協議会の構成員となり、協議会や国土交通省の調査・指導に必要な協力を行うことが求められます。加入は在留諸申請の前に済ませる必要があり、申請時には協議会の構成員であることの証明書を提出します。かつては「入国後4か月以内に加入」という猶予がありましたが、2024年(令和6年)6月15日以降はこの猶予がなくなっています。
国土交通省航空局のホームページによれば、加入届出は業務区分ごとの事務局へ電子メール(困難な場合は郵送)で提出し、会費は不要とされています。特定技能雇用契約の締結前でも、加入について事務局に相談できます。
航空分野の運用要領(出入国在留管理庁)
国土交通省航空局の協議会案内
③実務経験証明書の交付
特定技能外国人から求められた場合には、自社での実務経験を証明する書面を交付しなければなりません。交付しない場合は基準不適合となります。2号への移行で実務経験が問われる分野ならではの義務といえます。
受入れまでの流れと実務上の注意点|派遣禁止・支援委託・実務経験証明
受入れまでの大まかな流れは次のとおりです。
- 事業者要件の確認:空港管理者の承認・航空法上の認定(または委託関係)を書面で確認する
- 協議会への加入:国土交通省航空局の事務局へ加入届出を行い、構成員証明書を取得する
- 候補者の要件確認:評価試験・日本語試験の合格証、または技能実習2号の修了を確認する
- 特定技能雇用契約の締結と支援計画の作成:日本人と同等以上の報酬、1号特定技能外国人支援計画を整える
- 在留資格の申請:海外からの呼び寄せは在留資格認定証明書交付申請、国内在留者は在留資格変更許可申請を行う
実務上、特に注意したい点が3つあります。
1つ目は、労働者派遣による受入れが一切認められないことです。
航空分野は告示第1条で派遣形態が禁止されており、特定技能外国人を派遣することも、派遣された人を受け入れることもできません。
違反した場合は出入国に関する法令に関し不正または著しく不当な行為を行ったものとして、以後5年間、特定技能外国人を受け入れられなくなるとされています。
空港の現場では請負・業務委託・派遣が混在しやすいため、雇用関係と指揮命令系統を明確にしておくことが重要です。
2つ目は、支援を委託する登録支援機関も協議会に加入している必要があることです。
1号特定技能外国人支援計画の全部を委託する場合、委託先の登録支援機関も在留諸申請の前に協議会へ加入していなければなりません。
委託を検討している機関が航空分野の協議会に加入しているか、契約前に確認してください。自社で支援を行う場合の要件は別記事で解説しています。
登録支援機関に委託せず自社で支援する要件
3つ目は、キャリア形成を見据えた配置です。
分野別運用方針に基づき、国土交通省は「育成・キャリア形成プログラム」を策定しており、講習受講・資格取得、日本語能力、マネジメント経験などを軸に、2号を見据えた育成の指針が示されています。
2号の要件となる指導経験や3年以上の整備経験は、日々の配置と記録の積み重ねで満たしていくものです。採用段階から、どの業務をどのくらいの期間担当させるかを計画しておくことをおすすめします。
海外招聘・国内転職など外国人採用の進め方
よくある質問(FAQ)
- Q空港内の物販店や航空会社のカウンター業務でも、特定技能「航空」で採用できますか?
- A
航空分野で従事できるのは、運用要領別表に定める空港グランドハンドリングまたは航空機整備の業務です。2026年改正で「旅客ハンドリング業務」が明記されましたが、受入企業が空港管理者から営業を認められたグランドハンドリング事業者であることが前提であり、物販や飲食など他の業務は対象外と解されます。個別の業務が該当するかは、国土交通省航空局へ確認することをおすすめします。
- Q航空機整備の認定事業場から整備業務を受託している会社でも受け入れられますか?
- A
告示第2条第1号は、航空法第20条第1項第3号・第4号・第7号の能力について認定を受けた者に加え、「当該者から業務の委託を受けた者」も対象としています。そのため、受託関係が契約書等で確認できれば受入れの対象になり得ます。ただし、労働者派遣の形で整備士を受け入れることはできません。
- Q協議会にはいつまでに加入すればよいですか?費用はかかりますか?
- A
2024年6月15日以降は、初めて特定技能外国人を受け入れる場合でも、在留諸申請の前に加入し、構成員であることの証明書を申請時に提出する必要があります。国土交通省航空局のホームページでは、会費は不要と案内されています。証明書がそろわないと申請できないため、採用活動と並行して早めに手続きを進めてください。
協議会加入が間に合わない場合の特定活動(移行準備)
- Q2号に移行すれば家族を呼び寄せたり、在留期間の上限がなくなったりしますか?
- A
特定技能2号は、1号と異なり在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば配偶者と子の帯同も認められる在留資格です。ただし、航空分野の2号には評価試験等に加えて実務経験(航空機整備では3年以上)が求められ、改正後の運用要領では日本語能力(JLPT N3以上でCEFRのB1相当以上の判定)も示されています。2027年4月以降の日本語要件の取扱いは別途示される予定のため、最新情報の確認が必要です。
- Q特定技能で働いていた人が別の空港の会社へ転職することはできますか?
- A
特定技能外国人は、同じ業務区分の範囲内であれば転職が可能です。ただし、転職先も告示の事業者要件と協議会加入を満たしている必要があり、所属機関が変わる場合は在留資格変更許可申請が必要です。前職の会社は、本人から求められれば実務経験証明書を交付する義務があります。
まとめ
特定技能「航空」は、空港グランドハンドリングと航空機整備の2区分からなる分野で、2026年1月の分野別運用方針と7月の運用要領改正により、旅客ハンドリング・機内食の搭降載・航空燃料の取扱いまで業務範囲が広がりました。
一方で、受入企業は空港管理者の承認や航空法上の認定(またはその委託先)であることが求められ、在留諸申請の前に国土交通省の協議会へ加入する必要があります。
派遣による受入れは禁止され、違反すれば5年間受入れができなくなる点にも注意が必要です。特定技能の要件は分野ごとに細かく異なり、具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。
