特定技能「自動車整備」完全ガイド|認証工場・試験・協議会を行政書士が解説【2026年版】

特定技能

「整備士が採用できない。外国人材を検討したいが、うちの工場でも受け入れられるのか」

自動車整備分野の有効求人倍率は令和6年度で5.09倍(自動車整備分野の分野別運用方針)。地域を問わず人手不足が続き、特定技能での採用に踏み出す整備工場が増えています。

ただし自動車整備分野は、受入企業が「認証工場」であること、在留資格の申請より前に協議会へ加入していることという、この分野に固有の条件が課されています。

加入時期を誤ると申請そのものが不許可になるため、順序を間違えられません。さらに2026年1月の閣議決定によって、「車体整備業務」という新しい業務区分の新設が決まり、育成就労制度も自動車整備分野で始まることになりました。

この記事では、自社が受け入れられる事業場に当たるかの判断、1号・2号それぞれの試験と実務経験の要件、協議会加入の手続き、そしてこれから何が変わるのかを、申請取次行政書士が2026年9月時点の一次情報をもとに整理します。

【筆者プロフィール】

行政書士・第一種衛生管理者・EAPコンサルティング・ファイナンシャルプランニング技能検定3級

長年の総合人材サービス会社にて労働法令・労働市場・雇用関係に精通しており、

行政書士としては申請取次士として、数多くの在留資格の申請に携わる。 また、企業・団体などの外国人雇用に関する相談実績も多数。

特定技能「自動車整備」とは|受入れ見込数と人手不足の状況

自動車整備分野は、在留資格「特定技能」の制度が始まった2019年(平成31年)4月の当初から受入れ対象となっている分野で、特定技能1号・2号のいずれでも受け入れることができます。

分野を所管しているのは国土交通省(物流・自動車局自動車整備課)です。

制度の枠組みは、2026年(令和8年)1月23日の閣議決定で定められた「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(分野別運用方針)が基礎になります。

ここで示された数字を押さえておくと、この分野の位置づけがつかみやすくなります。

項目数値出典・時点
特定技能1号の受入れ見込数9,400人(令和10年度末までの5年間の上限)分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)
1号特定技能外国人の在留者数4,925人出入国在留管理庁(令和8年3月末時点・速報値)
受入れ見込数の充足率52.4%同上
直近1年間の増加数1,646人同上
育成就労外国人の受入れ見込数9,900人(令和9年度からの2年間)分野別運用方針

出入国在留管理庁の公表資料

出入国在留管理庁「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)」

人手不足の状況も、分野別運用方針のなかで具体的に示されています。

令和6年度の自動車整備分野の有効求人倍率は5.09倍。自動車保有台数が多い愛知県(5.70倍)・埼玉県(7.54倍)だけでなく、保有台数が少ない島根県(9.44倍)・福井県(8.80倍)でも高く、全国的な人手不足と評価されています。

令和10年度には約40万2,000人の就業者が必要になる一方、生産性向上や国内人材確保の取組を続けてもなお1万9,300人程度の不足が見込まれる、というのが国の見立てです。

特定技能制度そのものの全体像(1号と2号の違い、支援計画、届出義務など)を先に確認したい方は、あわせてご覧ください。

特定技能制度の全体像はこちら

特定技能制度とは?企業が知るべき外国人材受入れの完全ガイド

なお、同じ「自動車」でも、トラック・バス・タクシーの運転者を受け入れる「自動車運送業分野」は別の分野です。

また、自動車の部品をつくる工場は整備分野ではなく「工業製品製造業分野」の対象になります。自社がどの分野に当たるかを最初に切り分けてください。

運転者を採用する場合はこちらの分野

特定技能「自動車運送業」完全ガイド|要件・3区分・免許と日本語要件を行政書士が解説【2026年版】

自動車部品の製造はこちらの分野

特定技能「工業製品製造業」完全ガイド|17区分・JAIM入会を行政書士が解説【2026年版】

受け入れられる事業場の条件|「認証工場」であること

自動車整備分野で最初に確認すべきなのが、自社の事業場が「認証工場」かどうかです。

告示(平成31年国土交通省告示第358号)第2条第1号は、特定技能雇用契約の相手方となる機関について、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第78条第1項に基づき地方運輸局長から認証を受けた事業場を有することを求めています。

認証を受けていない工場では、そもそも特定技能外国人を受け入れることができません。

自動車整備分野の運用要領(別冊)

出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-自動車整備分野の基準について-」

ここで実務上つまずきやすいのが、技能実習制度との条件の違いです。

運用要領(別冊)は、技能実習では「対象とする装置の種類が限定されていない認証工場」に限られ、二輪自動車のみを対象とする事業場は除かれるのに対し、特定技能では、対象とする装置の種類が限定されている事業場や、二輪自動車のみを対象とする事業場における業務も自動車整備分野の業務に該当すると明記しています。

技能実習では受け入れられなかった工場でも、特定技能なら可能性があるということです。

また、受入れ後に特定技能外国人が働く事業場を変更する場合は、特定技能雇用契約変更の届出が必要です。複数の工場を持つ会社で異動させるときは、届出漏れに注意してください。

従事できる業務と、させてはいけない業務

2026年9月時点で、自動車整備分野の業務区分は1つです(今後の区分追加は後述します)。

1号特定技能外国人が従事する業務

  • 自動車の日常点検整備
  • 定期点検整備
  • 特定整備
  • 特定整備に付随する基礎的な業務(電子制御装置の整備、板金塗装など)

2号特定技能外国人が従事する業務

  • 他の要員への指導を行いながら従事する、上記の一般的な業務

「特定整備」は、道路運送車両法施行規則第3条に定められた作業を指します。かつての「分解整備」に電子制御装置整備が加わったもので、自動運転技術の普及に対応した区分です。

関連業務は「付随的に」なら差し支えない

運用要領は、その業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に、付随的に従事することは差し支えないとしています。具体例として挙げられているのは次のような作業です。

  • 整備内容の説明及び関連部品の販売
  • 部品番号検索・部内発注作業
  • ナビ・ETC等の電装品の取付作業
  • 洗車作業/下廻り塗装作業
  • 車内清掃作業/構内清掃作業
  • 部品等運搬作業/設備機器等清掃作業

ただし運用要領は、「専ら関連業務に従事することは、認められません」と明確に注記しています。

人手が足りないからといって、洗車と清掃、受付ばかりを担当させるような運用は制度違反です。

整備の主たる業務に従事させたうえで、その延長として関連業務を行わせる、という組み立てにしてください。

特定技能1号の要件|評価試験・整備士3級・技能実習からの移行

技能水準(試験区分)

1号特定技能外国人は、次のいずれかに合格している必要があります。

  • 自動車整備分野特定技能1号評価試験
  • 自動車整備士技能検定試験3級

自動車整備分野特定技能1号評価試験は、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(日整連)が実施しています。国内では令和2年9月25日から実施されており、海外ではフィリピン(令和元年12月3日〜)、ベトナム(令和6年5月24日〜)、インドネシア(令和7年4月11日〜)で行われています。

日整連の公表資料によると、試験はCBT方式で、内容は次のとおりです。

区分1号評価試験
学科試験真偽法(○×式)30問・60分
実技試験図等を用いた判断等試験 3課題・20分
合格基準学科は正解数が出題数の65%以上、実技は得点合計が60%以上
受験料(日本)4,300円(税込)
合格証明書交付手数料16,000円(税込・受入れ機関の負担)
受験資格試験日において17歳以上(インドネシア国籍は18歳以上)/日本国籍を有する方は受験不可

日整連の試験案内ページ

一般社団法人日本自動車整備振興会連合会「自動車整備分野特定技能評価試験」

日本語能力水準

運用要領(令和6年2月15日一部改正版)が定める1号の日本語要件は、次のいずれかです。

  • 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上
  • そのほか、「日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められるもの

なお、令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針では、1号の日本語能力水準が「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と表記されています。

他分野の運用要領では「JFT-BasicのA2.2相当以上またはJLPT N4以上」という形で整理されていますが、自動車整備分野の運用要領は2026年9月時点で改正されていません。実際の証明書類の取扱いは、申請前に出入国在留管理庁・国土交通省の最新の公表資料でご確認ください。

技能実習2号を良好に修了した場合の試験免除

  • 「自動車整備職種・自動車整備作業」の技能実習2号を良好に修了した方は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。
  • 職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した方は、日本語試験(JFT-Basic・JLPT N4以上)が免除されます。

免除を受けるには、技能実習2号修了時の外国人自動車整備技能実習評価試験(専門級)の合格証明書または実技試験の結果通知書の提出が必要です。

専門級の実技試験に合格していない場合(技能実習法施行前の旧制度の技能実習生を含む)は、試験を受験して合格するか、実習実施者が作成した技能等の修得等の状況を評価した文書(技能実習生に関する評価調書)を提出することになります。

この書類は元の実習実施者に作成してもらう必要があるため、移行を検討する段階で早めに手配してください。

特定技能2号の要件|3年以上の実務経験と2号評価試験

自動車整備分野は、特定技能2号での受入れが可能な分野です。2号になると在留期間の更新に上限がなくなり、要件を満たせば家族の帯同も可能になります。

技能水準は、次のいずれかです。

  • 自動車整備分野特定技能2号評価試験
  • 自動車整備士技能検定試験2級

実務経験の要件は、2号評価試験のルートを選ぶ場合に課されます。

道路運送車両法第78条第1項に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場(認証工場)における3年以上の実務経験が必要です(自動車整備士技能検定2級に合格した方は、この実務経験要件から除かれます)。

ここでいう実務経験とは「分解、点検、調整等の整備作業」を指し、運用要領は具体的に次の作業を挙げています。

  • 道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)第3条に規定する特定整備に係る作業
  • 電子制御装置の整備、板金塗装等の特定整備に付随する整備作業
  • キャブレータ、インジェクション・ポンプ等の主要な装置の点検、調整等の整備作業
  • 自動車の装置、主要部品等の交換を行う整備作業
  • 自動車の装置、主要部品等に係る点検、調整等の整備作業
  • 上記と同等の自動車の点検、調整等の整備作業

2号評価試験は令和6年7月16日から国内で開始されました。

日整連の案内によれば、受験資格として試験日の前日までに上記の実務経験が3年以上あることが必要で、転職等により1社で3年に満たない場合も複数社の累積で3年以上あれば差し支えなく、自動車整備分野の技能実習期間も実務経験としてカウントされるとされています。

区分2号評価試験
学科試験選択法(四択式)40問・80分
実技試験図等を用いた判断等試験 3課題・30分
合格基準学科は正解数が出題数の60%以上、実技は得点合計が60%以上
受験料(日本)4,800円(税込)

実務上とくに注意したいのが、学科と実技を同じ日に受験し、両方に合格する必要があるという点です。

日整連は、外国人技能養成講習を修了した方は実技試験が免除される一方、講習を修了していない方が学科試験だけを受験した場合は合否にかかわらずその試験が無効になり、受験料の払い戻しもできないと注意喚起しています。受験の申込み前に、免除対象かどうかを本人と確認しておいてください。

2026年8月20日以降、2号の申請には「業務内容に関する誓約書」が必要

出入国在留管理庁は2026年(令和8年)8月5日、「2号特定技能外国人の業務内容について」を公表し、同年8月20日以降の在留諸申請では「2号特定技能外国人の業務内容に関する誓約書」(参考様式第1-32号)を提出することとなるとしました。

自動車整備分野に限らず、2号特定技能外国人を受け入れるすべての分野に共通する運用です。

背景にあるのは、2号に求められる技能水準です。

基本方針において2号は「長年の実務経験等により身につけた熟達した技能」が求められ、「自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準」と定められています。

これを受けて各分野の分野別運用方針でも「複数の作業員を指導」や「工程を管理する業務」等が2号の従事する業務として定められており、技能実習生や1号特定技能外国人とは従事する業務が異なるという整理です。

誓約書は、この業務内容の違いと、2号特定技能外国人から指導を受ける対象者を在留諸申請の段階で確認するための書類とされています。

自動車整備分野でも、2号の業務は「自動車の日常点検、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務の一般的な業務や、他の要員への指導を行う業務」と整理されています(出入国在留管理庁「特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description)」)。

1号のときと同じ作業内容のまま在留資格だけを2号に変更する、という前提での申請は通りにくくなると考えられます。誰が指導を受ける対象者になるのかを、申請前に社内で整理しておいてください。

同庁は、記載内容と実際の内容に相違がある場合は在留資格が取り消される可能性があるほか、虚偽の内容を記載した場合は特定技能所属機関としての欠格事由に該当するとして、在留資格認定証明書の交付や在留諸申請の許否に大きく影響するため、参考様式の留意事項も確認のうえ具体的に記載するよう求めています。

ただし2026年9月時点で、同庁はこの参考様式について「指導対象者の考え方を含め、内容の見直しを検討しておりますので、整い次第お知らせします」と案内しています。

特定技能制度に関するQ&A(Q102)でも、指導対象者が一時的に不足している場合や指導対象者がフルタイムではない場合の取扱いについて問合せが寄せられているとして、見直しを検討中であり整い次第速やかに知らせるとされています。

2号への移行を予定している場合は、申請の直前に最新の様式と案内を確認することをおすすめします。

参考様式第1-32号の掲載ページ

出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」

受入企業に課される条件|協議会加入は「申請の前」に

告示第2条は、受入企業(特定技能所属機関)に次の条件を課しています。

  1. 道路運送車両法第78条第1項に基づき地方運輸局長から認証を受けた事業場を有すること
  2. 国土交通省が設置する自動車整備分野特定技能協議会の構成員であること
  3. 協議会に対し、必要な協力を行うこと
  4. 国土交通省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
  5. 支援計画の全部を登録支援機関に委託する場合は、1〜3を満たし、かつ「1級もしくは2級の自動車整備士の技能検定に合格した者」または「自動車整備士の養成施設において5年以上の指導に係る実務の経験を有する者」を置いている登録支援機関に委託すること
  6. 特定技能外国人から求められたときは、その機関における実務経験を証する書類を交付すること

協議会への加入は「受入れ後4か月以内」ではなくなった

以前の運用要領では、初めて受け入れる場合は「入国後4か月以内」に協議会へ加入すればよいとされていました。

しかし、令和6年2月15日の運用要領改正でこの猶予はなくなり、現在は「当該特定技能外国人に係る在留諸申請の前に」協議会に加入していることが必要です。

さらに運用要領は、令和6年6月15日以降、初めて特定技能外国人を受け入れる場合であっても、地方出入国在留管理局への在留諸申請の際に「協議会の構成員であることの証明書」の提出が必要であり、提出がない場合には当該申請は不許可となると明記しています。

登録支援機関に支援を委託する場合、その登録支援機関も同様に、支援を委託される外国人の在留諸申請の前に加入していなければなりません。

加入手続きは、国土交通省の案内によると次のとおりです。

  • 受入機関は「協議会第1号様式(入会届出書兼構成員資格証明書)」と「別表第1」、登録支援機関は「協議会第2号様式」と「別表第1」を提出する
  • 提出先は管轄エリアの地方運輸局(郵送の場合は返信用封筒を同封)
  • 会費は発生しない

内定から申請までのスケジュールが詰まっているときほど、この加入手続きが律速になります。在留期限が迫っていて加入が間に合わないケースの実務対応については、こちらの記事もご参照ください。

加入が間に合わないときの実務対応

特定技能に移行できない!協議会未加入でも使える特定活動(移行準備)とは

国土交通省の協議会案内ページ

国土交通省「自動車整備分野における『特定技能』の受入れ」

労働者派遣は禁止

告示第1条により、自動車整備分野の特定技能外国人は労働者派遣の対象とすることができません。派遣する側も、派遣された者を受け入れる側も不可です。

運用要領は、これに違反した場合、出入国に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を行ったものとして、以後5年間は特定技能外国人の受入れができないとしています。

繁忙期に系列店へ応援に出す、といった運用が偽装請負・労働者派遣に当たらないか、雇用形態を事前に確認してください。

1号には支援計画の実施義務がある

1号特定技能外国人を受け入れる場合、事前ガイダンス・出入国時の送迎・住居確保・生活オリエンテーション・日本語学習の機会の提供・相談対応・定期面談など、義務的支援を実施する必要があります。自社で実施するか登録支援機関に委託するかは選択できますが、前述のとおり、全部委託する場合の登録支援機関には自動車整備分野固有の人的要件(1級・2級整備士等の配置)がある点に注意が必要です。

自社支援の要件と義務的支援の内容

【2026年版】特定技能の自社支援とは|登録支援機関に委託しない要件と義務的支援を解説

これから何が変わるか|車体整備区分の新設と育成就労

令和8年1月23日の閣議決定により、自動車整備分野の枠組みは大きく変わります。制度改正を見据えた採用計画が必要です。

業務区分が「自動車整備業務」と「車体整備業務」の2つになる

新しい分野別運用方針では、業務区分が次の2つに整理されました。

業務区分従事する業務1号の技能水準2号の技能水準
自動車整備日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する基礎的な業務自動車整備業務特定技能1号評価試験 または 3級の自動車整備士の技能検定自動車整備業務特定技能2号評価試験 または 2級の自動車整備士の技能検定
車体整備車体の板金、塗装、ボデー・フレームの修正及びこれらに付随する特定整備の基礎的な業務車体整備業務特定技能1号評価試験車体整備業務特定技能2号評価試験 または 自動車車体・電子制御装置整備士の技能検定

これまで板金塗装は「特定整備に付随する業務」として整備区分のなかで扱われてきましたが、新たに独立した業務区分となり、専用の評価試験が設けられます。板金塗装を主力とする車体整備工場にとっては、受入れの入口が広がる改正です。

この技能水準と業務区分の変更には経過措置が置かれ、分野別運用方針「第四 経過措置」は、閣議決定日から令和9年(2027年)3月31日までの間は、なお従前の例によるとしています。

ただし、車体整備業務区分での受入れが実際にいつ始まるかは、2026年9月時点では確定していません。出入国在留管理庁は、令和8年1月23日閣議決定で新たに定められた特定産業分野及び業務区分について「省令等の準備が整い次第受入れが可能となります」とし、公布・施行された際に同庁ホームページで知らせるとしています。

自動車整備分野の運用要領(別冊)も改正されておらず、車体整備業務の新しい評価試験の実施時期も公表されていません。採用計画を立てる際は、出入国在留管理庁・国土交通省・試験実施機関の告知を確認してください。

分野別運用方針(別紙7 自動車整備)

出入国在留管理庁「特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領」

日本語能力の要件が方針上明記された

新しい分野別運用方針では、1号は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上、2号はB1相当以上と定められました。2号に日本語能力水準が定められたのは今回が初めてです。ただし、具体的にどの試験・どのスコアで証明するのかは、自動車整備分野の運用要領が改正されていないため2026年9月時点では示されていません。2号への移行を予定している場合は、最新の公表資料を確認してください。

登録支援機関の人的要件に選択肢が追加される

登録支援機関に置くべき者として、従来の「1級または2級の自動車整備士」「養成施設で5年以上の指導経験を有する者」に加え、「自動車車体・電子制御装置整備士の技能検定に合格した者」(車体整備業務区分のみ)が追加されます。

育成就労制度が自動車整備分野でも始まる

技能実習に代わる新しい制度である育成就労についても、自動車整備分野の枠組みが整備されています。2026年9月時点で公表されているのは次のとおりです。

  • 自動車整備分野育成就労協議会が設置されている(特定技能の協議会とは別組織。加入届出の提出先は事業所所在地を管轄する地方運輸局で、会費は無料)
  • 分野固有の基準を定める令和8年国土交通省告示第637号が定められている
  • 「特定の分野に係る育成就労制度運用要領-自動車整備分野の基準について-」(令和8年7月制定)が公表されている
  • 育成就労外国人の受入れ見込数は9,900人(令和9年度からの2年間)
  • 本人の意向による転籍の制限期間は2年(重要保安部品の特定整備等の技能修得には同一機関で2年の育成が必要、という理由が方針に明記)
  • 育成就労実施者も認証工場であることが条件。ただし業務区分が自動車整備の場合、その認証工場は二輪車のみを対象とするものでないこと、または対象とする装置に制限がないことが求められる(特定技能より条件が厳しい)
  • 入国後講習において、国土交通大臣が指定する教材を使用した自動車整備分野に関する講習の実施が必要
  • 育成就労評価試験(初級・専門級)は2026年9月時点で「準備中」

技能実習生を受け入れてきた工場は、育成就労への切替えを見据えて、協議会の加入区分(特定技能/育成就労)と認証の内容を早めに確認しておくことをおすすめします。

育成就労と特定技能の関係を整理した記事

在留資格「介護」とは?特定技能・技能実習(育成就労)との違いを行政書士が解説【2026年版】

育成就労分野の国土交通省案内ページ

国土交通省「自動車整備分野における「育成就労」の受入れ」

よくある質問(FAQ)

Q
認証を受けていない整備工場でも、特定技能外国人を受け入れられますか?
A

受け入れられません。告示第2条第1号により、受入企業は道路運送車両法第78条第1項に基づき地方運輸局長から認証を受けた事業場を有していることが条件とされています。まず認証の取得が前提となります。なお特定技能では、対象とする装置の種類が限定されている事業場や、二輪自動車のみを対象とする事業場での業務も分野の業務に該当すると運用要領に明記されています。

Q
協議会にはいつ加入すればよいですか?受入れ後でも間に合いますか?
A

現在は、当該特定技能外国人に係る在留諸申請の前に加入している必要があります。かつての「受入れ後4か月以内」という猶予は令和6年2月15日の運用要領改正でなくなりました。さらに令和6年6月15日以降は、初めての受入れであっても申請時に協議会の構成員であることの証明書の提出が必要で、提出がなければ不許可となる旨が運用要領に明記されています。

Q
人手が足りないので、洗車と受付を中心に担当してもらうことはできますか?
A

できません。運用要領は「専ら関連業務に従事することは、認められません」と明記しています。洗車や整備内容の説明、部品販売などは、日常点検整備・定期点検整備・特定整備といった主たる業務に従事したうえで付随的に行う場合に限って差し支えないという整理です。

Q
特定技能2号の「3年以上の実務経験」に、技能実習の期間は含まれますか?
A

試験実施機関である日整連は、自動車整備分野の技能実習期間も実務経験としてカウントし、転職等で1社では3年に満たない場合も複数社の累積で3年以上あれば差し支えないと案内しています。いずれも認証工場における分解・点検・調整等の整備作業であることが前提です。受験資格を満たさないまま受験した場合、合格しても無効となる旨も案内されていますので、事前に試験実施機関にご確認ください。

Q
派遣会社から特定技能外国人を受け入れることはできますか?
A

できません。告示第1条により、自動車整備分野では労働者派遣の対象となる特定技能雇用契約を締結していないことが上陸基準とされています。派遣する側・受け入れる側のいずれも認められず、違反した場合は以後5年間、特定技能外国人の受入れができなくなると解されます。

Q
1号から2号へ在留資格を変更する際、新たに必要になった書類はありますか?
A

2026年8月20日以降の在留諸申請では、「2号特定技能外国人の業務内容に関する誓約書」(参考様式第1-32号)の提出が求められています。2号は「複数の作業員を指導」する等、1号特定技能外国人や技能実習生とは従事する業務が異なるという整理のため、業務内容の違いと指導を受ける対象者を確認する趣旨の書類と解されます。ただし出入国在留管理庁は2026年9月時点でこの様式の見直しを検討中としているため、申請前に最新の様式と案内をご確認ください。

Q
車体整備区分はいつから使えるようになりますか?いま在留している1号の外国人はどうなりますか?
A

開始時期は2026年9月時点で確定していません。分野別運用方針の経過措置は、技能水準と業務区分について「閣議決定日から令和9年3月31日までは従前の例による」としていますが、出入国在留管理庁は新たに定められた業務区分の受入れ開始を「省令等の準備が整い次第」としており、公布・施行の際に同庁ホームページで知らせるとしています。既に在留している方の業務区分の整理や新しい評価試験の実施時期も示されていません。出入国在留管理庁および国土交通省の最新の公表資料をご確認ください。

まとめ

特定技能「自動車整備」は、認証工場であることと協議会への加入という2つの分野固有の条件を満たせば、深刻な整備士不足に対する現実的な選択肢になります。

1号は自動車整備分野特定技能1号評価試験または自動車整備士技能検定3級と日本語試験、2号は2号評価試験と認証工場での3年以上の実務経験が要件で、2026年8月20日以降の在留諸申請では業務内容に関する誓約書の提出も必要になりました。

協議会への加入は在留諸申請の前に済ませておく必要があり、順序を誤ると申請が不許可になります。

さらに、板金塗装を対象とする車体整備業務区分の新設と育成就労制度の開始が控えています(いずれも開始時期は省令等の整備次第です)。制度が動いている時期だからこそ、自社の認証内容と採用計画を早めに突き合わせておくことが重要です。具体的な手続きは個別事情によって異なるため、行政書士 加治屋事務所までご相談ください。

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